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オフショア開発成功の鍵は、 目指すゴールやビジョンの共有にあった!

2019/11/19


ベトナムの企業への発注は、今回が初めてというAI CROSS株式会社。VNEXTのハノイオフィスに何度も足を運んだというプロジェクトの責任者である森山様に、VNEXTの開発品質やオフショア開発成功の鍵をうかがいました。


 

—— AI CROSSがオフショア開発を始めたきっかけは?

森山さん: 弊社では以前からオフショア開発に着手していましたが、その大きなきっかけは人件費の高騰や人材不足により、国内のエンジニア確保が難しいことでした。弊社が提供するビジネスチャット「InCircle(インサークル)」の開発となると、iOS、Android、Windowsアプリ、Webシステムという複数のスキルが必要となり、そうした技術をもつエンジニアの確保となるとさらに困難です。そのため国内エンジニアという枠を設けず、積極的にオフショア開発を進めてきました。

 

—— VNEXTを選んだ理由は?

森山さん: これまで弊社では主に東アジアの企業とオフショア開発を行っていましたが、2017年頃から価格の高騰などでコストメリットが出にくくなってきたんです。そこで新たなパートナーの検討をしていたときに、知り合いの企業からVNEXTさんをご紹介いただきました。その際、複数社が候補に挙がったのですが、それぞれを比較した結果、価格メリットと品質管理体制からVNEXTさんを選びました。

オフショア開発でもっとも難しいことは、品質管理です。日本人なら伝わる表現が伝わらず、バグになっていたり、「そんなこと聞いていない」といって納品されたりするケースがよくあります。そんな状況の中で、品質管理がしっかりしていると紹介されたのがVNEXTさんでした。通常であれば、ある程度の品質は諦めることが多いオフショア開発で、ここまでできるのかと意外でした。日本での活動経歴も参考にし、VNEXTさんにお願いすることにしたんです。

 

今回のオフショア開発の責任者:森山さん

 

—— 今回、オフショア開発を行ったプロダクトは?

森山さん: 今回VNEXTさんに開発を依頼したのは、2つのプロダクトになります。ひとつめの「AIX Message SMS(エーアイクロス メッセージ エスエムエス)」は、法人向けSMS送受信サービスです。HTTPS・SMPP(v3.4)のAPIを活用した独自のシステム連携方式で、全キャリア対応しています。

ふたつめは前述した「InCircle」です。文書の入手から会議室のスケジュール予約まで、様々な日常業務を行うことができます。両サービスとも、すでにリリースされ、多くのお客様が使っているのですが、今回はその機能強化を依頼しました。

VNEXTさんが参加したのは2018年でした。「InCircle」はおおよそ半年のスパンで追加機能開発を行っており、「AIX Message SMS」は新プラットフォームを約1年間で開発し保守フェーズに入っています。

「AIX Message SMS」・「InCircle」の開発が始まったのは2014年頃でした。その後、サービス利用が拡大し、プロダクトが成熟した2018年に、それまでのベンダーからVNEXTさんに引き継いだことになります。

 

——「AIX Message SMS」「InCircle」の開発はどういう体制で進めましたか?

森山さん: 「AIX Message SMS」・「InCircle」それぞれで、社内に3人のチームを設けました。弊社からはPM、インフラ担当のエンジニア。そこにVNEXTさんのブリッジSEが加わりました。ハノイにはエンジニアが6名ほどのチームがつくられました。

東京のブリッジSEとして立っていただいたソンさんはVNEXTの副社長なので、専任がむずかしかったんです。そこでハノイにもブリッジSEを置き、東京とハノイのブリッジSEが一緒に動くという少し変わった体制をとりました。ソンさんが動けないときは、私たちがハノイのブリッジSEと会話ができるようにし、開発体制に柔軟性をもたせました。私は「AIX Message SMS」・「InCircle」のチーム、双方の責任者を担当しました。

 

—— 開発を進める上での課題は?

森山さん: 日本語のドキュメントをもとに、稼働中の既存システムを理解していただくのは大変だったと思います。かなりのスピードで市場が拡大しているため、お恥ずかしいことですがドキュメントに記されていない仕様もあったりしました。これらの課題に対してはVNEXTさんにソースコードの解析をお願いし、その結果をドキュメントに残していただけたおかげで、VNEXTさん側のエンジニアが入れ替わっても引継ぎはスムーズでした。

既存システムの理解に半年くらいかけたと思います。メジャーバージョンのリリースをずらし、時間的余裕がある中でじっくりと開発を進めていただきました。

 

—— 開発を進めるにあたって意識したことは?

森山さん: 開発の初期は、毎日対面のミーティングを30分~1時間ほどもつことで、進捗と課題の確認を行いました。既存システムなので何かあったときにコードを追うと、かなり時間がかかるんです。課題によってはVNEXTさんではなく、弊社の人間が対応したほうが早いものもあります。ミーティングではそうした切り分けを行いました。

 

—— VNEXTのエンジニアの印象は?

森山さん: ベトナム企業でのオフショア開発は初めてだったため、最初エンジニアのスキルや文化の違いについて不安がありました。ところがブリッジSEのソンさんは、技術力が高いことはもちろん、日本の会社での働き方も理解していたので進めやすかったです。日本語の会話は少し独特ですが、聞く、読む、書く力はかなり高いと思います。仕事に必要なコミュニケーションは、まったく問題がなかったですし、文化の違いも感じることはありませんでした。むしろ慣れない環境の中でも、我々が求めていることに最大限に応えようとしてくれているのを感じ、とてもありがたかったですね。

ハノイのオフィスに何度か行きましたが、日本に比べると若い方が多く、活力にあふれていると感じました。オフィスも日本の大手ITベンチャーのような雰囲気で、エンジニアが働きやすそうな環境が整っていました。

当初は、もしかしたらエンジニアをたくさん集めただけの会社かもしれないと思っていたんですが、役割分担がしっかりされていたのが安心でした。営業もいて品質管理部門もありましたし、なにより印象的だったのは彼らの日本への関心の高さですね。積極的に我々とコミュニケーションをとる方もいて、とてもいい刺激をもらうことができました。ベトナムの方は日本人より小柄な方が多いので、VNEXTの副社長の森さんが巨人に見えました(笑)。

 

ハノイを訪れ、現地のエンジニアと親交を深めた

 

—— VNEXTの開発品質はいかがでしたか?

森山さん: 満足しています。VNEXTさんには品質管理部門があり、テスターがいるので開発→テスト→修正→テストのプロセスが安定していました。タスクについても着実に対応いただきました。現在のバグfix系のほとんどは、過去の問題が顕著化しているケースなので、品質という点では特に問題はありません。

品質管理はたとえ1000項目あっても安心できません。なぜその項目が妥当なのか、どういう傾向で障害が出て、どういう理由で収束したのかという情報が重要なんですね。そうした情報がないと障害を出し切れているのかわかりません。そこで初日にVNEXTさんに、弊社と同じ管理手法を活用してほしいと伝えたら、翌日には解析結果のグラフが出てきて驚かされました。

 

—— 今回のオフショア開発で印象に残ったことは?

森山さん: AIの言語解析では、思ったより言葉の壁があることを痛感しました。AIの学習データを作成する際、日本語ができるベトナム人なら問題ないだろうと思ったのですが、実際やってみたらかなり難しいことがわかりました。ハノイにいる日本語を話す大学生に、AIが答えるベースとなるFAQ集を作成してもらったんですが、日本人がレビューするとどこか不自然だったんですね。会話やメールのコミュニケーションに問題がなくとも、日本語の細かいニュアンスを読み取るAIエンジンの学習は、日本人が行うほうがよいことはお互いの教訓になりました。

弊社のサービスはテキストを扱うので、AI関連のプロジェクトもテキストに依存したものになりますが、VNEXTさんは画像処理や検索などのAIの実績が豊富ですよね。言語に関係しないAIであれば、VNEXTさんの力を十分発揮していただけると思います。

 

—— オフショア開発成功の鍵は?

森山さん: これまで様々なオフショア開発を推進してきましたが、日本企業が失敗する大きな理由は丸投げです。対応がいいからといって、なんでもかんでもお任せするのは、後々問題になるケースが多いと思います。

サービスベンダーの弊社は、よりよいものをどこまでも追求する開発スタイル。「こちらで仕様書を作ったのでそのとおりにやってください」では、いいサービスはできません。どんなIT企業も社内リソースには限りがありますよね。それを最大限活用し、よりよいものを生み出すためには、関係者の間でサービスを取り巻く市場の動向やビジョン、そしてゴールを共有することが大切です。それによりAを依頼しても、A+1やBといった幅広い提案につながると考えています。

「InCircle」を例にとると、AndroidやiOSの動向は私たちよりVNEXTさんのエンジニアのほうが詳しい。実際に2か月後にはこう、半年後にはこうだからこれを導入しておきましょうという提案をいただきました。日本に多い受発注型の開発によくある単純に「次のOSのバージョンに対応してください」という依頼では、それしかやらないと思うんです。長期的視野に立ってお互いがパートナーとしてよいサービスをつくるためには、ゴールやビジョンの共有は欠かせません。

丸投げにならないように工程管理や特定の領域は私たちが責任をもち、お任せできる範囲はどこなのかをしっかり見極めることがオフショア開発を成功させる上で大切なことだと思います。私たちが考えていることを伝えて、同じ手法をとってもらえればスムーズですよね。そのために必要な情報やテンプレートはなるべく渡すようにしています。

 

パートナーとして一緒にゴールを目指すと依頼範囲の明確化が、成功の鍵と語る森山さん

 

—— 今後に関してはいかがでしょうか?

森山さん:「AIX Message SMS」の大規模アップデートは、今年の年末にリリース予定です。じっくりと時間をかけて進めてきたプロジェクトなので、これから最後の仕上げに入るところです。リリースが済んでいる「InCircle」に関しては、OSのアップデートのたびに必要となる膨大なテストを自動化する提案をいただいています。既存のサービスを滞りなく動かしつつ、新しいOSに対応させるのは手間がかかるので、役に立ちそうな仕組みに期待しています。次のフェーズで採用するかどうかを検討しているところです。これからも引き続きVNEXTさんにご協力いただければと考えています。

 


 

【プロフィール】

◆ 会社概要

AI CROSS株式会社

https://aicross.co.jp/

ビジネスコミュニケーションプラットフォームを革新する会社として2015年に誕生。メッセージングサービスのSMS、RCSのほか、ワークスタイル変革を推進するビジネスチャットサービス「InCircle」、チャットデータを分析し、HRTech領域に生かすAIソリューションにも注力している。

 

◆ インタビュー

開発部長

森山 大智

2017年4月入社。前職も含め、数多くのオフショア開発に携わる。アジアだけでなく米国企業とも協業する中で、文化の壁を越えてプロジェクトを成功に導いてきた経験をもつ。現在39歳。

 


 

VNEXTの振り返り

    

 

  
         

 

 


Nguyen Huy Son(グエン・フィー・ソン)・BrSE

ブリッジSEとしてAI CROSSさんに常駐して一年半ほどになります。ここではコミュニケーションを大切にしながら、開発が進んでいるのがありがたいです。毎日少なくとも15分程度の会議をもち、ベトナムにいるエンジニアチームと進捗や課題を共有しながら進めています。

最初ご挨拶をしたとき、AI CROSSの社長さんが女性なので驚きました。5年間日本で働く中で、女性社長が率いるIT企業は初めてでした。オフィスに常駐していると、社長さんが社員の方の信頼を集めているのを感じました。

一緒に働いているAI CROSSのみなさんとは、公私ともに親しくしていただいています。たまに金曜日の仕事帰りに、一緒にシャンパンを飲んでじっくり話すことがあります。社員に英語が堪能な方が多いのも印象的でした。