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2024/01/30
近年、IT大国として急成長している「ベトナム」は、オフショア開発の委託先として最も人気のある国です。
この背景には、ベトナムが国を挙げてIT人材の育成に注力しており、IT人材が豊富かつレベルも高く、それでいて人件費が安価であることが挙げられます。
しかし、ベトナムのITに対する取り組みについて具体的に把握している方は決して多くありません。
本記事では、ベトナムのIT事情からベトナムIT人材の魅力、レベルや得意とする技術などについて解説していきます。
目次
● ベトナムのIT事情▶️ ベトナムIT産業の概要▶︎ 国策によるIT人材育成● ベトナムIT人材の魅力▶︎ IT人材が豊富▶︎ 平均年齢は日本より10歳若い▶︎ 世界2位の勤勉さ▶︎ エンジニアのレベルが高い▶︎ 人件費が安い● ベトナムエンジニアのレベル● 得意とするプログラミング言語● 得意とするテクノロジー● ベトナムITの将来性● まとめ |
|ベトナムのIT事情
「Tholons Services Globalization Index 2021」によると、ベトナムは世界のデジタル国家トップ50の中で25位にランクされています。(日本は27位)
ベトナムが経済を再開する中、多くの外資系企業はベトナムを投資先の最上位に位置づけており、特に新興のテック分野での投資が注目されています。
ここでは、ベトナムIT産業の概要と国策によりIT人材育成についてご紹介します。
|ベトナムIT産業の概要
近年、ベトナムのITセクターは急速に成長しています。
アメリカの国際貿易局による産業報告によれば、ベトナムのICT市場は2021年に約77億米ドルの評価額を持っており、2022年から2026年までの期間で年間約8%のペースで成長すると予測されています。
ベトナム政府は、ICTを国の成長を促進するための主要な軸として見ています。
すべての政府機関に、より効果的に働き、より効率的に人々にサービスを提供するための最新のICTツールを使用するよう奨励しています。
ベトナム政府は、2030年を見据えて、2025年までの国家デジタル変革プログラムを承認し、これによりICT市場の成長がさらにサポートされることになります。
ベトナムIT産業における主要なサブセクターの一部として、以下が挙げられます。
|通信
ベトナムには5つのモバイル大手と3つのモバイル仮想ネットワーク大手があり、これらで市場の約95%を占めています。
しかし、現在ほとんどの人々が携帯電話を持っているため、通常の電話サービスからの収益が減少する可能性があります。
そのため、主要な企業はデジタルサービス、光ファイバーインフラ、デジタル決済、クラウドサービスなどのデジタルインフラとサービスの提供に焦点を当てています。
|ソフトウェア
ベトナムは、IT製品の製造やソフトウェア開発のアウトソーシングなどのサービスを提供する生産拠点となっています。
他国と同じように、ベトナムの銀行、石油・ガス、航空会社、電気通信はソフトウェアに多くの費用をかけています。
その他の潜在的な分野は、顧客関係管理(CRM)、企業リスク管理(ERP)、人事管理(HRM)、クラウドコンピューティング、デジタルコンテンツ、フィンテックなどのITサービスが含まれます。
|フィンテック
Statistaの調査によると、ベトナムはアジアの新興フィンテック市場の一つとなっています。
市場の最大のセグメントは、2023年に総取引価値が3億2,230万米ドルとなるデジタル投資となります。
|eコマース
Statistaの調査では、ベトナムのeコマース市場の価値は2025年に390億米ドルに達すると予測されており、インドネシアに次いで2位となっています。
ベトナムでは、デジタルユーザーの増加とインターネットの普及率の上昇により、eコマースビジネスが繁栄する絶好の機会となっています。
その結果、国内の小売り総売上のeコマースのシェアは急速に増加しており、特に日常の製品において、オンラインショッピングは実店舗のショッピングよりも速やかに成長しています。
|サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティは、ベトナムのIT産業にとって重要なセクターです。
国は、デジタル資産やインフラを保護する上で増加するサイバー脅威に直面しています。
2022年1月、ベトナム国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)はベトナムで1,383件のサイバー攻撃を報告しました。これは、2021年12月と比較して10.29%の顕著な増加でした。
この問題に対処するため、ベトナム政府は、サイバーセキュリティに関するいくつかの法律と規制を発行しています。
― 2015年:情報セキュリティ法
― 2018年:サイバーセキュリティ法
― 2019年:サイバーセキュリティ国家戦略 など
政府はまた、自国のサイバーセキュリティ製品やサービスの開発に投資しています。
|国策によるIT人材育成
ベトナムでは1998年に初めて成立した教育法に基づき、小学3年生から英語教育およびコンピューター教育を実施しています。
また、政府主導で学校全体をデジタル化、IT機器を積極的に導入するとともに、特にSTEM科目(科学・技術・工学・数学)の強化に力を入れてきました。
その中でも、ソフトウェアに関しては、中学2年生からソフトウェアコーディングやIT科目の授業が始まり、年間5万人のIT技術者を輩出することに貢献しています。
また、ベトナムはOCEDのPISA(2015年)でも8位にランクされており、科学と数学の分野では、韓国やアメリカなどの先進国を上回っています。
この結果として、2020年の時点でベトナム国内には40万人のIT技術者が存在しており、2019年のICT関連の売上は1,123億5,000万USドル*にもなっています。
*参考:Vietnam IT Market Report2020
|ベトナムIT人材の魅力
上述のように、ベトナムは国を挙げてのIT人材育成に力を入れており、レベルの高いITエンジニアが多く、オフショア開発先としても人気があります。
次は、ベトナムのIT人材の魅力について解説していきます。
|IT人材が豊富
TopDev「VietnamITMarketReport_TechHiring2022」によると、2022年に、ベトナムのソフトウェア業界は48万人がITエンジニアとして働いていると発表しています。
日本のITエンジニア人口が約120万人であることから、これは日本の40%に相当します。
さらに、ベトナムでは毎年、57,000人のソフトウェア専攻の学生を輩出しています。
このような状況は、毎年約6万人のIT専門教育を受けた人材が安定して供給される基盤となり、ベトナムのIT分野における急速な成長を促進していると言えます。
日本では、IT人材不足が深刻化しており、2030年には79万人のIT人材が需要に対して供給が不足すると予測されています。
そのため、日本のITリソース不足をベトナムオフショアで解決する企業が増えてきています。
|平均年齢は日本より10歳若い
同レポートに基づくと、ベトナムのITエンジニアの中で、20代が半数以上を占め、平均年齢も30歳前後です。
対して、日本のITエンジニアの平均年齢は40歳前後のため、ベトナムより約10歳高いです。
ベトナム全体の国民の平均年齢も31歳であり、ベトナムのITエンジニアの平均年齢は国民の平均年齢とほとんど同じです。
平均年齢の若さは、見方によって長所と短所の両方があるかもしれませんが、技術が迅速に進化し、変化が激しいITの分野では、若さが多くの場合において有益であると言えるでしょう。
|世界2位の勤勉さ
ベトナム人は向上心が高いうえに、日本人よりも転職が身近にあることから、社会人になってからもスキルアップのために勉強を行う人が多くいることがわかっています。
特に、日々新しい技術が発明・開発されるITの世界において、勉強は欠かせません。
IPAによる2017年の調査報告をみると、週あたりのベトナムのIT人材の平均勉強時間は3.5時間で、IT大国であるインドの4.0時間に次いで2位です。
なお、本調査において、中国はベトナムと同率2位であり、各国のIT人材と比較して、日本のIT人材の勉強時間が最も短い(1.9時間)という結果となっています。
ベトナムでは、2010年代より高い経済成長が続いてきたことも相まって、努力をすればさらなる高収入が実現できるといったモチベーションが強いことが、こうした現状の背景にあると考えられています。
|エンジニアのレベルが高い
ベトナムは国策として教育の推進を優先事項として掲げており、特に注力しているのが情報技術です。
その成果もあって、2017年にベトナムは国際数学オリンピックで世界3位を獲得しています(2022年は世界4位)。
ここ10年間の平均順位は10位程度を推移しており、これは日本やヨーロッパ各国よりも高いです。
また、近年のベトナムは、国際プログラミングコンテストでも好成績を残しています。
ベトナム国家大学ハノイ校は、ベトナムの名門大学として2015〜2019年まで5年連続で決勝大会に進出しました。2018年の順位は15位で、ハーバード大学やスタンフォード大学、インド工科大学といった名門大学よりも上位の成績を残しています。
ベトナムのIT企業は、ハノイ校のように名門大学からの人材を採用する傾向にあるため、新入社員でも即戦力になっている状況です。
|人件費が安い
ベトナムのIT人材の人件費は、年々増加傾向にありますが、日本国内の開発者に比べると依然として安い水準です。
一般的にベトナムのIT人材の人件費は、日本の2分の1から3分の1程度と考えられています。
そのため、コスト削減を実現する手段として、ベトナムのIT人材を活用したオフショア開発の実施は有効な選択肢だといえるでしょう。
|ベトナムエンジニアのレベル
ベトナムのITエンジニアのうち、20代が半数を占めることから、経験年数が3年以下の者が約50%となっています。
4年以上の経験を持つ者は、4〜5年が20%程度、6年以上が30%程度を占めています。
ITエンジニアのスキルレベルに関しては、以下のように分布しています。
・フレッシャー:12%
・ジュニア:29%
・ミドル:34%
・シニア:18%
・リーダー以上:7%
一方で、Qiitaが2022年に発表した「エンジニア白書2022」によると、日本のITエンジニアのスキルレベルの分布は以下となります。
・フレッシャー:10%
・ジュニア:15%
・ミドル:30%
・シニア:20%
・リーダー以上:25%
ベトナムは日本と比較すると、リーダー以上の層が薄いですが、日本エンジニアは25〜34歳が32%と最も多く、次に45歳以上が29%の割合で占めています。
ベトナムエンジニアの半数が20代ということを見ると、今後シニア、リーダー以上のスキルレベルを持った人材が増えていくと予想できます。
|得意とするプログラミング言語
ベトナムのITエンジニアが特に得意とするプログラミング言語は、Javascript、Java、C#、PHP、Python、Rubyなどがあります。
フレームワークに関しては、React、Spring Boot、.NET Core、Laravel、Djangoなどがよく使用されています。
これらは日本での需要が高いプログラミング言語とフレームワークに相性が良いです。
上記の言語は、対応可能なITエンジニアが豊富にいる主要なプログラミング言語です。
多くのオフショア開発会社は、これらに加えて他の需要の高い言語にも一通り対応することができます。
特定のプログラミング言語やフレームワークを必要とする場合、外部のオフショア開発会社を選ぶ際には、その言語への対応が可能か事前に確認するようにしましょう。
|得意とするテクノロジー
ベトナム人ITエンジニアの間では、AI、機械学習、データサイエンス、ブロックチェーン、NFTなどの最先端技術への関心が非常に高いです。
この最新技術への強い興味は、エンジニアの若い年齢層の影響である可能性があります。
また、ベトナムでもAIや機械学習のITエンジニアの給与水準は他の分野に比べて高いため、給与水準の差も一つの理由として考えられます。
2023年にOpenAI社のChat GPTが注目を浴び、AI技術がかつてない人気を集めています。
今後、AIを始めとする先端技術の分野でベトナム人ITエンジニアの重要性が増していくと考えられるでしょう。
|ベトナムITの将来性
今後も、ベトナム政府は国のデジタル化およびDX化を推進すべく、さまざまな施策を打ち出していくものとみられます。
実際に、2020年には、ベトナム政府が「2025年までの国家デジタルトランスフォーメーション(DX)プログラムおよび2030年までの方針」を承認し、首相が政府議定「749/QD-TTg」に署名しています。
この計画は、ベトナムが2030年までに高度なデジタル国家になることを目指すものであり、行政手続やデータの管理のデジタル化による効率化だけでなく、それが民間企業の経営や人々の生活を改善させるような改革を行うという内容です。
ベトナム政府は、デジタル政府・デジタル経済・デジタル社会を作る一方で、グローバルデジタル企業の設立支援も展開すると述べています。
「749/QD-TTg」の中では、2030年までに以下のような目標が定義されています。
― 光ファイバーのカバー率100%
― ICT開発指数(IDI)世界30位以内
― 世界競争力指数(GCI)世界30位以内
― ブロードバンドカバー状況:全国で5G利用可
これまでもベトナム政府はIT人材の育成に力を入れてきましたが、今後は上記の計画をもとに、国のDX化・行政のデジタル化・IT化をさらに強く推進していくものと推測されています。
|まとめ
近年、ベトナムはオフショア開発の委託先として最も人気のある国です。
IT人材の育成に注力していることが、オフショア開発委託先としてベトナムに人気が集まる理由の1つです。
ベトナムのIT人材の特徴として、単純に人口が多いというだけでなく、勉強熱心でエンジニアのレベルが高く、日本人エンジニアよりコストを抑えられる点などにも魅力があります。
また、プログラミング言語と開発ジャンルの側面で多彩な得意分野を持ち、オフショア開発委託先としてさまざまな開発業務を委託できます。
ベトナムIT市場は今後も成長が見込まれるため、オフショア開発の委託候補先として検討してみてはいかがでしょうか?