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【デジタルツインとは】世界で注目される理由や活用メリットを解説!

2023/11/08

近年、製造業を中心に注目をあびている「デジタルツイン(Digital Twin)」

 

デジタルツインとは、現実世界の物体や環境から収集したデータを使い、仮想空間上に全く同じ環境をあたかも双子のように再現する

テクノロジーのことです。

 

製造業に革命をもたらす技術ともいわれていますが、デジタルツインの活用はさまざまな業界・分野でも活用され始めています。

 

本記事では、「デジタルツインとは何か?」から注目されている理由活用メリットなどを解説していきます。

 

 目次 

● デジタルツインとは?

 ▶︎ デジタルツインとシミュレーションの違い

● デジタルツインが注目されている理由

● デジタルツインを活用するメリット

 ▶️ 開発や生産の効率化

 ▶️ オペレーションの効率化

 ▶️ アフターサービスの充実

● DXにおけるデジタルツインの重要性

● デジタルツインを支える技術

 ▶️ IoT

 ▶️ AI

 ▶️ 5G

 ▶️ AR・VR

 ▶️ CAE

● デジタルツインの活用事例

 ▶︎ 日本:ダイキン工業

 ▶︎ 日本:トヨタ自動車

 ▶︎ アメリカ:ゼネラル・エレクトリック社

 ▶︎ ドイツ:シーメンス

● まとめ

 

|デジタルツインとは? 

デジタルツインとは、現実世界(物理空間)から収集したさまざまなデータを、まるで双子であるかのように、仮想空間(デジタル空間)で再現する

技術のことです。

 

現実世界の環境を仮想空間にコピーする鏡の中の世界のようなイメージであり、「デジタルの双子」の意味を込めてデジタルツインと呼ばれています。

 

デジタルツインは従来の仮想空間と異なり、よりリアルな空間をリアルタイムで再現できることが特徴です。

 

仮想空間では、収集した膨大なデータをもとに、限りなく現実に近い物理的なシミュレーションや分析ができるため、製品の製造工程やサービスの

在り方を改善するうえで有効な手段となります。

 

たとえば、製造ラインの一部を変更する場合に、事前にデジタルツイン上でテスト運営(シミュレーション)することで、開発期間やコストの削減が

見込めます。

 

デジタルツインは、IoTとAIの進化により、IoTで取得したさまざまなデータをクラウド上のサーバにリアルタイムで送信し、AIが分析・処理をすることで

リアルタイムな物理空間の再現が可能になりました。

 

デジタルツインの情報を使い、将来の変化に対するシミュレーションや分析を行うことで、コスト削減や業務効率化、リスクの回避などに備えられます。

 

Digital Twin

 

|デジタルツインとシミュレーションの違い 

シミュレーションとは、実物と同じまたは近い条件の環境や設備・製品などによって実証試験を行うことで、デジタルツインもシミュレーションの

一種といえます。

 

デジタルツインとシミュレーションの大きな違いは「再現方法」です。

デジタルツインは、現実から得たデータをデジタルに反映デジタル上でAIが分析して現実へフィードバック、といった双方向性を持っています。

 

また、インターネットを活用して、常に現実とデジタルがリアルタイムで連動するリアルタイム性も、従来のシミュレーションにはなかった特徴の

ひとつです。

 

デジタルツインは現実そのものがモデルとなっているため、より多くの視点から問題を監視・分析し、実際の設備や製品の改善により役立てやすいです。

 

|デジタルツインが注目されている理由 

デジタルツインが世界中で注目されている最大の理由は、技術の発達により、現実世界を高い精度でデジタル上に再現することが可能になったからです。

 

具体的には、IoTやAI、VRなどの技術が劇的に進化し、再現される現実世界の解像度が飛躍的に向上しました。

これにより、事象の詳細を把握するだけでなく、リアルタイムに構築・分析をし、最適な解決策を見つけることが可能になりました。

 

デジタルツインは産業のイノベーションを推進する原動力として高い可能性を秘めているので、製造業やエネルギー産業をはじめ、多くの分野で

活用が期待されています。

 

たとえば、新たな製品を製造する際にデジタルツインを活用し、分析・シミュレーションを行うことで、予め課題や解決策などが発見できるため、

実際に製造する際には短期間・低コスト・低リスクで高品質な製品を開発することが可能になるわけです。

 

|デジタルツインを活用するメリット 

デジタルツインを構築し活用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

以下では、デジタルツインの活用が進む製造業を例にメリットをご紹介します。

 

|開発や生産の効率化 

新製品の開発には膨大なコストがかかります。

 

たとえば、製造業や建築業の企画・設計プロセスでは、設計図をもとにプロトタイプを何度も作成し、試験を行います。

試験結果によっては設計図から作成のし直しが必要です。

 

デジタルツインを使い、仮想空間上の3Dモデルで検討できると、現実世界で行うより多くの試作や試験が可能となるため、従来の方法では見つけられ

なかった製品の欠陥の発見が可能です。

 

現実世界でのプロトタイプを作る回数も減らせることから、開発コストの削減や製造のリードタイム短縮が期待できます。

 

|オペレーションの効率化 

従来では、オペレーションでトラブルが発生した場合、事後に原因の解析と対策を行っていました。

 

このような状況も、デジタルツインを構築することで事前に対策の実施ができます。

 

デジタルツインに随時、もしくは一定間隔でセンサー情報を送っておけば、デジタルツイン上でリアルタイムにデータを収集・分析し、エラーや故障の

原因を切り分けることが可能となり、オペレーションが停止することを防止できます。

 

|アフターサービスの充実 

顧客に対するきめ細やかなアフターサービスも実現できます。

 

デジタルツインの情報を使うと、製品を出荷した後でも、顧客が製品を使用したことによる部品やバッテリーの状況も把握できるようになるためです。

 

部品交換やバッテリー交換などのアフターサービスを適切なタイミングで行うことができるので、顧客満足度を高めることも期待できます。

 

|DXにおけるデジタルツインの重要性 

現在、日本でもDXの取り組みが活発になってきています。

 

株式会社電通デジタルの調査によると2019年の時点で日本企業の70%がDXに着手して、8%程の企業はDXを完了させており、今後もDXは日本において

浸透が図られていくでしょう。

 

このDXにおいて、さまざまな課題がありますが、その中に「膨大なデータの効果的な活用」が挙げられています。

 

企業の蓄積するデータ量は年々増えてきてはいるものの、DXが完了していない企業の多くはこれを十分に活用できていないでしょう。

 

IoTで集めたデータをAIで分析し、ARなどで視覚的に見せるデジタルツインは、ビッグデータを効果的に活用する技術のひとつとしてDXと切っても

切れない関係といえます。

 

膨大なデータを収集・分析し、仮想空間でモニタリングするデジタルツインはDXの課題を解決し、データ活用の新たなステージとして重要な意味を

持つ技術となるでしょう。

 

|デジタルツインを支える技術 

デジタルツインを構築するには、現実世界(物理空間)の状態を感知するセンサーやその情報を送信するためのネットワーク、データを保管・加工・

分析する情報基盤、そして分析結果を視覚化する手段が必要です。

 

この手段となり、デジタルツインを支える技術を見ていきましょう。

 

|IoT 

IoT (モノのインターネット)は、あらゆるモノがインターネットと接続して通信を行う技術です。

 

高精度な仮想空間を作るためには多くのデータが必要です。

 

IoTを活用し、センサーや監視カメラなど、情報を持つモノがインターネットを介して送受信を行うことで、あらゆるモノからデータ収集をし続ける

ことが、デジタルツインの実現に向けた第一歩となります。

 

|AI 

IoTが収集した膨大なデータは、使いやすいように加工され、分析や予測に使用されます。

 

この膨大なデータの分析や予測を、精度良く行うのがAI(人工知能)です。

 

AIは膨大なデータを効率的に分析することに長けているため、AIを利用することで、膨大なデータを処理できるようになり、異常や新しいパターンの

発見や、収集したデータから将来の状況の予測が可能になります。

 

|5G 

IoTで取得したデータをクラウドなどのデータセンターに集めるには、高速かつ大容量で低遅延の通信技術を必要とします。

 

そのための手段のひとつが「5G(第5世代移動通信システム)」です。

 

5Gは大容量のデータを超高速、超低遅延で送受信できるようになるため、リアルタイムでの仮想空間へのデータ反映に高い効果が見込める技術だと

いえます。

 

|AR・VR 

デジタルツインには、AIが行った分析や予測結果を可視化して、人にわかりやすく見せる技術も必要です。

 

それを可能とするのが、ARVRといった技術です。

 

・AR(拡張現実):現実世界にデジタルコンテンツを重ねて表示する技術

・VR(仮想現実):仮想空間を現実の世界のように体感できる技術

 

仮想空間で起きた不具合やエラーを視覚化することで、現実世界(物理空間)へのよりリアルなフィードバックが得られるため、AR・VR技術の

発展には期待が寄せられています。

 

|CAE 

CAEとはComputer Aided Engineeringの略称で、製品の設計や開発・工程設計などの際に事前シミュレーションを行う技術のことです。

 

以前から存在する概念ですが、IoTの普及で実態に近いデータをリアルタイムに活用できるようになり、注目を集めています。

 

|デジタルツインの活用事例 

デジタルツインは国内外でも活用が進んでいます。以下では代表的な活用事例を4つご紹介します。

 

|日本:ダイキン工業 

エアコンや化学製品などを製造するダイキン工業は、2020年より堺製作所臨海工場において、デジタルツインを用いた新生産管理システムを

稼働し始めました。

 

製造ライン上に設置した各種センサーから取得した生体データ、制御データ、温度・CO2濃度データなどをリアルタイムにデジタルツイン上に反映し、

異常予測機能を用いて重大インシデントを未然に防ぐ取り組みを行っています。

 

これにより、前年度比で3割強のロスを削減できるそうです。

 

|日本:トヨタ自動車 

トヨタ自動車が2021年2月より取り組みを開始した「Woven City(ウーブン・シティ)」でもデジタルツインを活用しています。

 

Woven Cityは、モノやサービスが情報でつながる時代を見据え、テクノロジーやサービスの実証実験をする都市です。

 

技術開発や検証をスピーディに行うためのプラットフォームとして、デジタルツインを活用。

自動運転やモビリティ、ロボットなど新領域のテクノロジーを仮想空間上でシミュレーションし、2025年に実際の入居が開始される予定です。

 

|アメリカ:ゼネラル・エレクトリック社 

航空機エンジンや発電、セキュリティ技術など幅広い事業を展開している、アメリカのゼネラル・エレクトリック社(以下、GE)。

 

GEでは、航空機に使われているエンジンのあらゆるデータを、エンジンに取り付けた200ものセンサーからリアルタイムに収集しています。

 

これらのリアルタイムで収集・モニタリングしたデータに加え、風や雨などの気象状況のデータも踏まえて物理空間の状況を仮想空間に複製することで、

高精度の仮想空間でAIがエンジンの状況を分析し、適切なタイミングでメンテナンスを実施。

 

これにより、メンテナンス時期を割り出すコストを無くし、保守費用のコストカットにも成功しています。


参考:デジタル・ツイン:データを分析して将来を予測する│GE Reports Japan

 

|ドイツ:シーメンス 

ドイツのエレクトロニクスやデジタル分野におけるテクノロジー企業シーメンスは、DXを実現するためのサービスとして全ての機械のコンセプト、

制御設計、立ち上げ、製造、保守までをデータでつなぐことによる、デジタルツインのソリューションを提供しています。

 

デジタルツインは製造業にとって必要不可欠なものとして、設計やプランニング、製造、製品のパフォーマンスに関する情報をつないでいます。

 

シーメンスは、全てのデータをつなぐことにより設計の標準化や機械の付加価値創出が可能であるという前提のもと、同ソリューションを導入した

企業では開発期間を30%短縮させ、新製品の早期開発、コスト削減を実現しました。

 

|まとめ 

IoTやAI、AR・VRなどの技術進展によって実現したデジタルツインは、製造業や都市をはじめ活用が進んでおり、コスト削減や業務効率化などが

期待されている技術です。

 

膨大なデータをデジタルツインで活用することで、分析やシミュレーションによる効率的なモノ作りから課題解決まで、デジタルツインはスケール感も

幅広く、その用途もますます拡大していくでしょう。

 

現在は、製造業を中心に活用が進んでいますが、デジタル庁の「データ戦略タスクフォース第一次とりまとめ」にあるデータ戦略のビジョンとして、

デジタルツインを前提とした経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を目指すとしています。

 

また、DXの課題でもある「膨大なデータの効果的な活用」にもデジタルツインは有効的です。

 

自社の課題解決になる手段にもなる可能性があるので、まずはデジタルツインのことを理解し、最新情報のキャッチアップから始めてみましょう。