VNEXTの会社紹介資料
2024/01/17
近年、世界中でERPが普及していますが、同時に「SAP」という言葉を耳にしたことがありませんか?
SAPとは、ドイツに本社を置くソフトウェアの大手ベンダーのSAP社が提供する「ERPパッケージ」のことです。
本記事では、SAPの基礎知識からERPとの関係性、SAPを導入するメリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。
目次
|SAPとは?
SAP(エス・エー・ピー)とは、ドイツ中西部のヴァルドルフに本社を置く、ヨーロッパ最大級のソフトウェア開発会社の名称で、SAP(以下SAP社)は
「System Analysis Program Development」の頭字語です。
本来、SAPはSAP社を指しますが、近年ではSAP社が提供する「ERPパッケージ」を指して使うことが多いです。
SAP社は、1972年に創業以来、全世界の多くの企業に製品を供給し、企業に即したシステムをパッケージとして導入してきました。
1992年には日本法人であるSAPジャパンが設立されています。
SAP社が開発・提供するERPパッケージ製品 「SAP ERP」や「SAPシステム」が、ERP製品の代表格として世界中の企業で利用されています。
SAPを語る上で欠かせないのが「ERP」です。次は、ERPとは何かを解説します。
|ERPとは
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略語で、日本語では「経営資源計画」となります。
統合基幹業務システム・基幹システムという意味もあり、ERPパッケージや ERPシステムなどの言い方もあります。
ERPの目的は、組織全体に分散している「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源の情報を、統合的に(計画)管理することにより、業務の効率化や
経営の意思決定を迅速に行い、経営の効率化を図ることです。
ERPを一言で表すと、「企業全体の経営資源を一元管理するシステム」です。
ERPを活用することで、大きく2つのメリットがあります。
・企業の基幹情報を統合的かつリアルタイムで処理できる
・効率的な経営スタイルを目指せる
ERPは、企業の会計・人事・生産・物流・販売などの基幹業務を一元化することで、業務効率化や大量の情報をわかりやすくするという効果があります。
では、なぜSAP社のERPが世界中で普及しているのでしょうか?
|SAPの特徴
SAP社が提供するERPが普及している理由には、他社とは違う3つの特徴にあります。
|1.グローバル企業への導入実績
SAPは、長い歴史と実績が評価され、グローバル企業での豊富な導入実績があります。
特に大企業での採用が多く、フォーチュン500社に選ばれる 多くの企業が「SAP ERP」を利用しています。
また、グループ会社や中堅向けのERPパッケージ(SAP Business Oneなど)も提供しています。
|2.標準機能が豊富
SAPのERPパッケージには、さまざまな業種業態のニーズに対応できる豊富な標準機能を提供しています。
世界中で幅広い業種の企業に利用されてきた実績に基づいて、各国法制度や商習慣にも対応でき、グローバルビジネスを展開する企業の課題にも
柔軟に対応しています。
|3.多様なインフラ展開をサポート
近年、ますます進むデジタル化やクラウド化にも多様なインフラ選択肢で応えることができます。
SaaS型の「SAP S/4HANA Cloud」、パブリッククラウド上での利用や基盤運用をSAP社が行う「SAP HAHA Enterprise Cloud」といったインフラを
展開しています。
また、オンプレやパブリッククラウド上で自社やパートナーが運用する選択も可能です。
米PeopleSoftの「PeopleSoft」、米J.D.Edwardsの「OneWorld」、米Oracleの「Oracle Applications」、オランダBaanの「BaanERP」といった各種ERP
パッケージ商品がありますが、このような特徴からSAP社は世界のERP市場でシェア率1位を誇っています。
参考:Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2019-2024
|SAPでできること
SAP社が提供するERPパッケージ「SAP ERP」は、下図の4つのモジュールで構成されています
モジュールとは、特定の業務に関わる機能をひとまとめにしたプログラムの集合体です。
これらモジュールは互いに連携して、SAP ERPの目的である「情報の一元化による業務効率化」を実現しています。
以下では、4つのモジュールの役割について解説します。
|会計モジュール
会計モジュールには、財務会計・管理会計などがあります。
財務会計:外部会計・制度会計を担当し、他モジュールの財務データをまとめて管理する
管理会計:内部会計を担当し、業務で発生する費用の管理・調整・最適化などを行う
財務会計は、内部統制との正誤性を考えつつ、クライアントの会計方針に応じて最適な業務を提案し、効率化を測ります。
一方、管理会計は、販売計画・生産性・購買計画などからなる原価策定方法を議論した上で最適な提案をします。
このモジュールは、販売・購買・生産・財務領域からの損益情報なども収集してくれるため、原価差額分析と最適な提案も行ってくれます。
|ロジスティックモジュール
ロジスティックモジュールは、販売管理や購買管理・在庫管理などを行います。
販売管理:商品の物流や販売業務をサポート
在庫管理:販売管理と連動しており、現状把握がしやすくなり棚卸業務を効率化
購買管理は、需要に基づく購買量の選定・契約条件・承認方法・仕入れ先情報管理・返品等の例外処理業務などを行います。
また、越境ビジネスにおけるお金の流れも管理しています。
在庫管理に関しては、製造部門・購買部門・物流部門から発生する在庫受払別の処理・社外出荷のタイミング決定・車中在庫の管理・棚卸などを
最適化するための提案を行います。
さらに、ロジスティックモジュールは「物流管理」も行っています。
出荷指示を受けた出荷部署の業務を検討し、社内倉庫の物流を最適化するという課題を持って管理方法なども含めて提案します。
|人事モジュール
人事モジュールが担当している機能は、人事管理のみです。
人材の採用から退職だけでなく、部署・役職変更や勤務時間も一元管理します。
また、部署の移動や勤務時間なども細かく管理できるので、人件費削減には大きく貢献できます。
|その他のモジュール
その他のモジュールの機能は、生産管理・プロジェクト管理・プラント保全の3つです。
生産管理:生産活動にあたっての業務管理を行う
プロジェクト管理:プロジェクト進行に必要なチェック体制や情報共有、データ集計など
プラント保全:製造業における生産拠点など、設備の保全保守やセキュリティ管理を行う
特に、生産管理では、需要に基づく生産量の決定・リードタイム、能力別の生産管理計画・オーダー、作業フローの管理などを最適化するための
提案を行うため、クライアントの求める要件別に応じた提案も可能になります。
|SAPのメリット
SAPが人気の理由は、システムとして完成度と信頼性が高く、導入することによるメリットが明確化できるためです。
ここでは、SAP導入をするメリットを解説します。
|業務プロセスの標準化
SAPを導入すると、業務プロセスが世界スタンダードレベルに標準化されるため、業務効率化を図ることが可能です。
日本企業の中には、業務上の承認が多重になっていることを筆頭に、効率の悪い業務プロセスを取っているケースが多く見られます。
SAPは、世界の優良企業における業務プロセスを基に開発されています。
そのため、SAPを導入する上では自社の業務プロセスをSAPに合わせて変化させる・改革することが必要です。
|データ処理の効率化
従来の部門内で完結している業務システムは、ひとつの部門から他の部門へとデータ引き継ぎする際に時間のロスが発生します。
SAPはデータをリアルタイムに一元管理できるため、データ処理の効率化ができます。
たとえば、始業時に商品在庫が100個であった時、営業部門が60個の発注を取ると、在庫データはすぐに40個と反映されます。
入力情報は、データ連携により他部門がすぐ確認できる形となるため、データ不整合は発生しません。
経営者層にとっても、業務データを抽出してすぐ情報分析することができるため、経営戦略における意思決定を素早く行うことが可能となります。
|作業履歴の可視化
業務を管理する上では、「誰が・いつ・何をしたのか」を把握できなければなりません。
業務プロセスに遅れや間違いが生じた場合、どのように作業を行ったのかを知る必要があるためです。
SAPは、伝票入力などといったデータ変更を伴う作業において、作業履歴がユーザーIDと紐づけられて残ります。
履歴管理に優れているため、たとえ不正なデータ入力・改ざんを行われたとしても、すぐに確認して究明することが可能です。
|コスト削減
SAPのメリットの中で、最も感じられるのはコスト削減という側面でしょう。
SAPの導入によって今まで各部門で管理する必要のあった業務も一括管理できるので、人件費を大幅にカットすることができます。
また、導入後のシステム開発をする必要がないだけではなく、リアルタイムで業務管理ができるため、時間的コストの削減にも繋がります。
|社会的な信頼性が高まる
SAPは全世界において使用されているシェア率の高いシステムのため、製品に対する信頼性が高いこともメリットです。
また、SAPは現在グローバルスタンダードとなっている「IFRS(国際会計基準/国際財務報告基準)」にも対応しており、日本国内だけでなく、
海外各国と取引を行う企業にとっても安心して導入できるシステムとして認知されています。
海外拠点で行われている取引データや業務データも一括管理できるため、コストを抑えてスムーズに業務を進めることにつながります。
企業が取引先から信頼を得るためには、実績に加えてスムーズな業務システムの整備が不可欠です。
SAPは、情報共有不足によるトラブルの防止やシェア率の高い製品を使用しているということで信頼性を与えてくれるため、事業展開に効果的だと
言えます。
|SAPのデメリット
SAPの導入に関してはさまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。
もし、SAP導入を検討している際は、以下のデメリットを把握しておきましょう。
|導入費用が高額
SAPのデメリットは、導入費用が高額となることです。
情報システムを社内に置くオンプレミス版で導入する場合は、初期費用の他に以下の料金が発生します。
・ソフトウェアのライセンス料金
・サーバ費用
・システム構築料金
・開発費用(SAPに付加機能を持たせる場合)
一方で、クラウド版のSAPは月額料金で利用できるようになっています。
しかし、クラウド版であっても初期費用は必要となり、およそ1,000万円はかかると見積もらなければなりません。
中小企業にとってSAPにかかるコストは高額といえます。
|機能や設定が複雑
SAPは前述したモジュールによって機能が豊富に搭載されており、さまざまな業種に対応することができます。
しかし、機能や設定が複雑なため、使いこなすまでに時間がかかるというデメリットがあります。
また、SAPは「ABAP」という独自のプログラミング言語によって構築されているため、導入・運用するためにはABAPを扱える知識を持った
人材が必要です。
SAPを導入する際は、ABAPの知識を持った人材を雇用したり、社内で育成するといった対応が必要になるでしょう。
|SAPへの理解が必要
SAPは業務効率化のために有効なシステムではありますが、導入したからといってすべての業務が効率化するわけではありません。
導入した後に正しくシステムを運用するためには、あらかじめSAPを正しく扱うための知識を付けておく必要があります。
そのため、プロジェクトリーダーを置く、正しく扱うためのマニュアルを整備するなど、SAPに対してある程度の理解がある人材を選定することが
重要になるでしょう。
|SAPを導入している日本企業の事例
日本でもSAPを導入している企業は多いです。ここでは、SAPを導入した日本企業の代表例をご紹介します。
|アスクル株式会社
事務用品の販売を行なっているアスクル株式会社では、請求書の支払承認プロセスの電子化を可能にする「S/4HANA」を導入しました。
同社では、仕入先から受領する請求書の管理において、紙とPDFが混在していたため、リモートワークを推進したくても出社が必要な状態でした。
そこで、「S/4HANA」を導入したところ、忙しい決算の時期でも経理部のリモートワーク実施率を50%近くに向上させることに成功しました。
また、経理部で紙の使用料を年間10万枚削減、伝票の印刷やファイリングにかかっていた180時間の業務を削減するなど、あわせて業務効率化も
実現しています。
参考:SCSK―アスクル株式会社へ経理業務のデジタル化と効率化を支援
|ヨネックス株式会社
スポーツ用品メーカーのヨネックス株式会社では、SAPの次世代ERPスイートの最新版「SAP S/4HANA」を導入しました。
同社は、国産パッケージソフトと自社が作り上げたシステムを合わせて運用していましたが、海外を含めたサプライチェーンの強化や業務効率化を
考えると現行のシステムでは厳しいと判断し、「SAP S/4HANA」を採用に至りました。
現在は「SAP S/4HANA」の導入を通じたDXによって、抜本的な業務効率化やグローバル経営基盤の確立を目指しています。
参考:SAPジャパンーヨネックスがSAPの次世代ERP「SAP S/4HANA®」の採用を決定
|キリンホールディングス株式会社
食品メーカーであるキリンホールディングス株式会社は、2027年までに「食から医にわたる領域で価値を想像し、世界のCSV先進企業となる」として、
DX化を強く推進しています。
その一環として、経理・生産・物流の3領域でSAPを導入し、独自機能を最小限に「業務」をシステムに合わせることを選択しました。
たとえば、これまで事業部門ごとに構築していたシステムを、SAPに合わせて全てクラウド環境に集約しています。
今後は、ECO事業などで蓄積している顧客データの連携にも取り組むとしています。
参考:キリンホールディングス株式会社―キリングループのDXに関する取り組み
|SAPの2027年問題
最後に、近年SAP導入企業において話題になっている「SAP 2027年問題」について解説します。
「SAP 2027年問題」とは、大企業を中心に世界中の企業で基幹システムパッケージとして使用されているERPソリューション「SAP ERP 6.0」
(ECC 6.0)のメインストリームサポートが2027年末に期限を迎えるという問題です。
元々は2025年末が期限でしたが、2年延長されたことを受け「SAP 2027年問題」となりました。
対象となるSAP製品を使用している企業は、最新の基幹システムパッケージである『SAP S/4HANA』に移行するなどの経営判断が迫られています。
この「SAP 2027年問題」に企業が対応するためには、以下の選択肢を選ぶ必要があります。
選択肢①:「SAP ERP 6.0」(ECC 6.0)から最新版「SAP S/4HANA」への切り換え
選択肢②:移行せず継続して利用
選択肢③:他のERPサービスへ移行
SAP社が推奨しているのは選択肢①ですが、選択肢②の「SAP ERP 6.0」(ECC 6.0)を使い続けることも可能です。
継続して利用するために、現在の保守基準料金に2%追加することで、保守期限を2030年末まで伸ばす延長保守サービスも用意されています。
システム基盤を刷新しないため業務面で混乱を起こすことはありませんが、機能が拡張されることもないため、デジタル戦略において最適化を
進めている競合他社からは後れを取る恐れがあります。
また、他のERPへ移行する選択肢もありますが、ERPシステムの選定から開発、導入に至るまで多大なコストが発生します。
さらに、過去に蓄積したデータや知見、ノウハウが活かせなくなる恐れもあります。
「SAP 2027年問題」への対応は、企業の状況によって選択肢を慎重に選ぶ必要があります。
弊社VNEXTでは、この「SAP 2027年問題」に対応するためのSAP導入支援やマイグレーションなどのソリューションを提供しています。
|まとめ
SAPとは、SAP社が提供している「ERPパッケージ」であり、『経営資源を一元管理するシステム』です。
SAPを導入することで、業務プロセスの標準化やデータ処理の効率化、コスト削減などのメリットを享受できます。
一方で、導入コストが高額であることや機能が複雑なため使いこなすためにSAPについて理解を深めることが必要といったデメリットもあります。
SAPのメリットを最大限享受するために、SAPの機能や導入に対する注意点を検討し、自社に適合する形が見つけられれば導入してみてはいかがでしょうか?
|VNEXTはSAP認定パートナー
弊社VNEXTは、SAPの認定パートナー企業として、SAPに関するソリューションを提供しています。
現在、国内ではIT人材不足が課題になっており、2030年までに79万人のIT人材が不足すると言われています。
その中でも、SAP開発人材は1万人以上不足すると予想されます。
VNEXTは15年以上、ベトナムオフショア開発サービスを展開しており、SAP開発人材も豊富です。
SAPコンサルタントから開発・導入支援、運用・保守まで一気通貫でサポートしています。
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