VNEXTの会社紹介資料
2024/02/01
2022年から2023年にかけて、極端な円安や更なるDXの加速、ChatGPTをはじめとする生成AIの隆盛など、IT業界において世界規模でさまざまな大きな動きがありました。
こうした中で、オフショア開発業界においても大きな変動が生じています。
本記事では、『オフショア開発白書(2023年版)』を読み解き、ベトナムで実際にオフショア開発を行うVNEXTが得た情報などをもとに、オフショア開発をめぐる最新動向についてご紹介します。
目次
● 2023年度のオフショア開発動向● オフショア開発を依頼する企業の規模・業種の変化● オフショア開発を行う目的の変化● オフショア開発の活用方法が多様化● オフショア開発国を選ぶうえで知っておきたい国の特徴▶︎ ベトナム▶︎ フィリピン▶︎ インド▶︎ バングラデシュ▶︎ 中国● まとめ |
|2023年度のオフショア開発動向
オフショア開発の動向を知るためのポイントは、以下の2つです。
― オフショア開発を依頼する企業の規模・業種の変化
― オフショア開発をおこなう目的の変化
コロナ禍やロシアウクライナ問題、ハマスによるイスラエル攻撃、長期化する円安など、社会の情勢や経済の目まぐるしい変化に伴い、海外進出する国内企業にも大きな変化が起こっています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
|オフショア開発を依頼する企業の規模・業種の変化
まずは、オフショア開発を検討する日本企業の動向についてみていきましょう。
|企業規模の変化
この数字は、2022年度に比べると以下の変化がありました。
― 100名以下の企業割合:69% → 62%と減少
― 11〜50名の企業割合:21% → 16%と減少
― 5001名以上の企業割合:7% → 14%に増加
2023年度では、従業員数100名以下、特に11~50名の中小規模の企業によるオフショア開発のニーズが減少しているようです。
その背景としては、中小規模の企業はオフショア開発の主要な目的に「コスト削減」をおいていた企業が多く、オフショア先の人件費向上や大幅な円安によりコスト削減効果が減少したことが考えられます。
結果として、中小企業を中心に、オフショア開発から内製化やニアショアを含む国内開発への回帰が起きている可能性もあります。
その一方で、従業員数5001名以上の企業の割合は7%→14%に倍増しています。
したがって、多くのITリソースを必要とする大規模企業では、国内のIT人材不足に対して海外のIT人材を確保するために、円安に関係なくオフショア開発の検討が進んでいると見られます。
実際に、VNEXTでも以前に比べて大企業からの問い合わせや展示会などの参加が増えており、大企業によるオフショア開発ニーズが高まっていることを実感しています。
DODAによる転職求人倍率レポート(2023年12月)でもITエンジニアの求人倍率が10倍を超えており、国内のITエンジニアの不足がますます拡大してきていることがその背景としてあると考えられます。
|企業業種の変化
続いて、オフショア開発の相談があった企業の業種割合は以下のとおりです。
グラフの通り、約3分の2が「IT業」ということがわかります。前年はIT業からの相談が53%となっており、IT業でのオフショア活用の検討が加速している、と言えるでしょう。
またIT業に続いて、「メーカー」「サービス」といった業界でのオフショア活用が進んでいることがわかります。「メーカー」ではCAD/CAM/CAE解析といった設計開発や組み込み開発が中心ですが、IoT開発など先端技術を用いた開発もオフショア開発で検討する動きが出てきています。
一方、「サービス」業ではモバイルアプリやサービス系のWebシステム開発などの相談が主な内容となっています。
VNEXTでも、クライアントの約半数はIT業からの案件を頂いております。自社サービスの開発だけでなく、運用・保守にリソースが割けないなど、さまざまな理由があります。
|企業属性の変化
最後に、オフショア開発の相談があった企業の属性割合は以下のとおりです。
「ベンダー」とはSIerやシステム開発会社などを指し、クライアントに対して開発などのITサービスを提供する企業のことを指しています。
また「エンドユーザー」は、自社でサービスやプロダクトを開発しており、その開発にオフショア開発を活用しようとしている企業のことです。
このデータによると、エンドユーザーが67%と過半数を占めており、ベンダーの33%の倍程度の割合となっています。しかし、前年と比べるとベンダの割合が25%→33%と拡大しています。
その背景としては、古くから日本の主要オフショア開発先であった中国の人件費増やカントリーリスクの影響などから、中国から東南アジアをはじめとする他地域のオフショア開発会社への変更先を探しているベンダーが増加してきている可能性が考えられます。
また、エンドユーザーについては上でも述べた通り、オフショア開発から内製化や国内回帰が進んでおり、相対的にベンダの割合が高まったという可能性があります。
こちらも同様に、VNEXTでもベンダーからの問い合わせがやはり増加しています。
特に印象的なこととしては、ベンダーの人材リソース不足や、クライアントから依頼があった案件に適しているスキルを持ったエンジニアがいないということでした。
日本国内のIT人材のひっ迫とそれに伴う人件費増などによって、ベンダーもまたオフショアへの移行を余儀なくされていると見ることができるかもしれません。
|オフショア開発を行う目的の変化
日本企業がオフショア開発を始めたのは1980年代からと言われています。
中国やアジアなど、賃金の安い海外で開発をおこなうことによる「コスト削減」を目的として、国内企業のなかで徐々に浸透していきました。
しかし、昨今では国内のエンジニアが不足しているため、コスト削減よりも「オフショア開発に移行しないと、そもそもエンジニアを始めとして技術者の調達が不可能」という状況になりつつあります。
経済産業省の試算によると、2030年には国内で約80万人のIT人材が不足するとされており、今後もさらにリソースの確保を目的としたオフショア開発が進んでいくでしょう。
|オフショア開発の活用方法が多様化
オフショア開発の活用方法は、前年に比べてますます進んでいます。
ここでは、オフショア開発の活用方法についての最新動向についてご紹介します。
|ユーザー企業がオフショア開発拠点を設立するケース
オフショア開発においては、海外に拠点を構える外部のオフショア開発会社にシステム開発などの業務を委託するという形が一般的です。
しかしながら、近年では外部の海外企業に開発業務を委託するのではなく、ユーザー企業自らが海外に進出し、現地に自社プロダクトのオフショア開発拠点を設ける動きがより見られるようになってきています。
近年の例としては、2022年11月に発表されたSansan株式会社のフィリピン開発拠点の設立が注目を集めました。
参考:Sansan株式会社|フィリピン・セブ島にグローバル開発センターを設立
VNEXTが拠点とするベトナムでも、2010年代半ばから株式会社ラクスやヤフー株式会社、株式会社マネーフォワードをはじめ多くの日本企業による自社オフショア開発拠点の設立が進んでいます。
今後も日本で不足するIT人材の確保を主な目的として、海外での自社オフショア開発拠点設立の流れがさらに加速していく可能性も十分考えられます。
しかし、いきなり海外に自社開発拠点を設立するというのはリスクが大きく、また実際に得られる成果も不透明です。
そのため、まずは外部のオフショア開発会社を活用するところから始めるのがいいでしょう。
|ラボ契約が増加傾向に
オフショア開発会社にシステム開発などの業務を委託する際の契約形態としては「請負契約」と「ラボ契約」の2種類が一般的です。
― 請負契約:成果物に対する契約
― ラボ契約:作業要員 × 期間に対する契約で、オフショア開発企業の中に専任の作業チームを確保する
まずは「請負契約」ではじめ、徐々に「ラボ契約」に移行していく形が推奨されることが多いものの、「ラボ契約」によるラボ型開発から開始するというケースがよく見られるようになってきました。
ラボ契約によって行われるラボ型開発は、事前に仕様が固まっていない場合でもスムーズに始めることができ、また中長期的に同じ人材を確保できることや、短期的なトライアルもしやすいといったメリットがあることから、近年ますます活用が増えている形態です。
オフショア開発白書によれば、オフショア開発案件の契約形態別の割合としてはラボ契約が63%、請負契約が37%と、ラボ契約が過半数を占めています。
ラボ型開発は発注側のマネジメントが必要となることもあり、うまく運用するためにはコツがいる側面もありますが、比較的小規模・短期で始めやすいというメリットもあります。
こういった面から、ラボ型開発はオフショア開発のトライアルとしても活用しやすいため、まずは「ラボ型」から始め、ラボチームが軌道に乗ったら「請負型」にグロースしていく方向で検討している企業が非常に多くなっています。
▶︎ 関連記事:【ラボ型開発とは?】オフショア開発の契約形態とメリット・デメリットを解説!
VNEXTでは、ユーザー企業さまにより柔軟に活用いただけるよう、ラボ型開発にも対応しております。ラボ型開発にご興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
▶︎ お問い合わせ:https://vnext.co.jp/contact.html?view=contact
|オフショア開発国を選ぶうえで知っておきたい国の特徴
オフショア開発国によって、言語やスキル・文化・平均的な賃金などの違いを知っておく必要があります。
以下のグラフは、日本企業がオフショア開発先として選ぶ国別ランキングです。
ここでは、オフショア開発国の中でも注目される5カ国の特徴を紹介します。
|ベトナム
オフショア開発国のなかでも昨今、圧倒的に人気が高いのがベトナムです。
2022年の日本貿易振興機構JETRO「海外進出日系企業実態調査|アジア・オセアニア編」によると、約1,800社もの日本企業が進出しています。
人気の理由は、なんといっても「開発の進めやすさ」です。
第一外国語として日本語教育をおこなう小学校もあり、日本語検定を持っている人もたくさんいます。我々にとって、母国語でコミュニケーションが取れるという点は非常に大きなメリットです。ただ、日本語のレベルは人によるため、人材の見極めに注意が必要です。
ホーチミンやハノイから離れた第3・第4の都市にいくと、比較的に給与水準は低くなりますが、日本語能力が高いエンジニアや、Web3.0や仮想通貨、NFT領域の開発経験者のなどスキルを持った人材の給与水準は高まる一方です。IT教育も盛んで若いエンジニアが次々に市場に出ているため、一般的な技術領域であれば、安定的な人材の確保が可能です。
高い技術力を背景に高い給与を稼げるITの仕事の人気が高く、国としても教育に力を入れているため、若い世代の優秀なエンジニアが豊富に育っている国と言えます。
また、歴史的背景から親日国として知られるベトナムは、日本のドラマが国営放送で流れていたり、「進撃の巨人」や「ワンピース」、「鬼滅の刃」などの日本のアニメも浸透していたりと、日本の文化についても理解や関心があります。
オフショア開発は「言葉の壁」によって起こる、文化や認識の違いがコミュニケーションを難しくさせますが、ベトナムは親日であることや、勤勉さといった面で日本人と相性がいいと言われています。
こういった面でも、日本企業がスムーズに開発が行える理由として挙げられます。
|フィリピン
フィリピンはベトナムや中国と異なり、日本語が話せる人があまりいません。
しかし、法律で母国語をフィリピン語(タガログ語)と英語の2カ国語と定めているため、英語の語学力は非常に高く、ビジネスレベルの会話は問題なくおこなえます。
歴史的にフィリピンでは、英語を使ったBPO(コールセンターなど)の領域で成長してきた背景があり、技術スペックの幅はこれからといった印象ですが、英語が得意な人材が多く、平均年齢も若いため、英語でのオペレーションが可能であれば優秀な人材を確保できる可能性が高いです。
ベトナム同様、親日国としても知られ国交も良好です。また、日本との時差がわずか1時間であることも開発のしやすさに繋がります。
言語の壁はあるものの、企業がグローバル展開を押し進めるというトレンドにおいては今後さらに注目される有望なオフショア開発国と言えるでしょう。
|インド
インドはフィリピンと同様、日本語を話せる人は非常に少なく、英語を得意としています。
公用語がヒンディー語と英語であるため、英語でのコミュニケーションには困りません。
インドは今回紹介する5ヵ国のなかで、中国に続いて2番目に高い給与水準です。
2010年頃から世界最高峰の技術大学・インド工科大学(IIT)が注目され、新卒社員に対して数千万円のオファーが出るようになってから、現在は幅広い人材の給与水準が上がっています。現在では、IITは23校にまで増えており、日本で言うと東大が23個もあるような状態なので、優秀な人材がたくさんいるのは間違いないですね。
特に、データサイエンティストやAIエンジニアの人材の単価が高騰しているため、英語でのオペレーションとラボ型開発ができないとコストが大きくなる傾向があります。
また、英語人材が多いことを背景に、日本企業よりも欧米企業を相手にビジネスをしている企業が多いというのもインドの特徴です。
日本との時差が3時間半あるため、プロジェクトの進行でコミュニケーションを取る際は配慮が必要です。特に、大量のデータを扱うプロジェクトや、英語でのオペレーションであれば成功確率が高い国と言えるでしょう。
グローバルの開発ニーズに応えるうえで重要なオフショア開発国のひとつですが、日本においては英語でプロジェクトを進行する場合、仕事の進め方やコミュニケーションの点でもフィリピンの方が現実的と言えるでしょう。
|バングラデシュ
バングラデシュは、ミャンマーなどとともに “ポストベトナム” と言われるオフショア開発国のひとつです。
今回ご紹介した5ヵ国の中でもっとも単価が安く、特にPMに至っては中国やインドの5割程度の単価感です。
隣国のインドとともに英語が得意で、やはりアメリカ企業の需要を取り込んでいる傾向が強くあります。技術面では発展途上のため、上流工程をインドで開発し、下流工程をバングラデシュで開発する企業もあるようです。
ただし、日本の企業でバングラデシュに進出をしているという事例はあまり多くないようです。バングラデシュに依頼する場合、ラボ型開発で英語が使えるPMを国内採用するのがよいでしょう。
|中国
中国は日本のオフショア開発において先駆けとなった国です。
まだ中国の給与水準が低かった時代に、日本の仕事を獲得するために日本語を習得する人が多くいたため、ベトナムと同様、言語のハードルは低いと言えます。
エンジニアの技術力はオフショア開発の先進国として世界トップレベルを誇り、それと同時に単価も高騰しています。コストが高くなっても超優秀な人材を採用したいと考える場合、中国という選択肢もありですが、コスト削減を目指すのであれば難しいでしょう。
また、台湾問題や米中の関係の悪化といった社会情勢により、日本に支社を構えるアメリカの法人企業においては軒並み中国から撤退する動きが顕著です。
|まとめ
オフショア開発において、短期間で結果を出そうとすることは非常に難しいものです。
プロジェクトチームを立ち上げてからさまざまな課題を乗り越え、安定運営できるようになってから初めて成果が出てきます。
一度トライして「無理だった!」と諦めるのではなく、長期的な視野で取り組んでみてください。その取り組みは、日本が向き合わなければいけない「IT人材のリソース不足」という大きな壁を打破する一歩になるはずです。
ボーダーを気にせず、作りたいものを作れる環境を用意するのが、私たちVNEXTの仕事だと思っています。
VNEXTでは、ベトナムのハノイとダナンにも拠点を持ち、オフショア開発を推進する企業さまを支援しています。ご興味ある方は、ぜひVNEXTのオフショア開発サービスについてご覧ください。
▶︎ オフショア開発サービス:https://vnext.co.jp/service-labo.html
オフショア開発会社を選ぶ際の「オフショア開発チェックシート」も、ぜひご活用ください!