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ニアショアとは?オフショアとの違いやメリット・デメリットを解説!

2024/03/18

システムやアプリの開発、運用・保守業務を海外に委託する「オフショア」に対して、国内の地方業務に外注することを「ニアショア」といいます。

 

近年、オフショア開発を導入する企業が増えていますが、同時にニアショア開発も注目されています。

 

本記事では、ニアショアとは何か?オフショアとの違いやメリット・デメリットなどについて解説します。

 

 目次 

● ニアショアとは?

● ニアショアが注目されている理由

● 地方のIT産業の状況

● ニアショアのメリット

● ニアショアのデメリット

● ニアショアの導入事例

● ニアショアとオフショアの活用ポイント

● まとめ

 

 

|ニアショアとは? 

ニアショア

 

ニアショアとは、システムやアプリの開発、運用・保守などの業務の一部またはすべてを国内の地方都市にある企業に委託をすることです。

「オフショア(offshore)」が海外の企業への外注を指すのに対して、比較的近い地域の企業を指すことから「ニアショア(nearshore)」と呼ばれています。

 

特に、ソフトウェアやシステムなどの開発業務をニアショアの企業を活用して行うことを「ニアショア開発」と呼びます。IT業界でニアショアという言葉を用いる場合、基本的にはニアショア開発のことを指します。

 

一方で、同様の開発業務を海外の企業やリソースを活用して行うことは「オフショア開発」と呼びます。

 

ニアショアとオフショアいずれも、コスト削減やリソースの確保を目的として活用されています。

 

ちなみに、ニアショアとオフショアと似た言葉で「オンショア」がありますが、これは開発業務をすべて自社内で行うことを指します。10年ほど前まではオンショアが主流でした。

 

・ニアショア:開発業務の一部またはすべてを国内の地方都市で行うこと

・オフショア:開発業務を海外に委託すること

・オンショア:開発業務をすべて自社内で行うこと



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|ニアショアとオフショアの違い 

ニアショアとオフショアの大きな違いは、「国内と海外」という外注先の違いです。

 

言語や文化の異なる外注先と円滑なコミュニケーションをとるためには、単に仕事のスキルだけではなくコミュニケーションスキルや言語能力、そして異文化理解など多種の勉強や知識が必要となります。

 

プロジェクトの進捗管理以外にも多彩な能力が必要となり、現地責任者を選定・育成するにも時間がかかります。

 

またオフショア開発では、どの国で開発を行うかが非常に重要なポイントです。かつての新興国が発展して、コスト削減のメリットがそこまで高くない国も増えてきています。

 

その点ニアショアでは、国内なのでコスト面に関する情報収集も海外と比べて容易です。また万が一トラブルがあった場合でも、国内の開発拠点であればすぐに駆けつけることができますが、海外拠点へ赴く場合には飛行機や宿泊施設の手配に時間が必要になります。

 

とはいえ、オフショア開発はニアショアと比べ、リソースの確保が容易、コスト削減の効果が高いことが魅力です。

 

ニアショアとオフショアそれぞれ特徴があるため、自社のプロダクトに合った開発手法を選ぶことが大切です。

 

 

|ニアショアが注目されている理由 

近年、ニアショアが注目されるようになった理由は、人材不足を解決し、コストを削減できることや、日本語が通じる地域への開発依頼であるためにコミュニケーションが円滑なものになるという点が挙げられます。

 

加えて、地方の開発会社は請負の経験値が豊富であり、開発がスムーズに進むとして人気を集めています。

 

地方都市に開発を依頼することで、都心に災害が起きた際のリスクヘッジとしてニアショアを利用する企業も少なくないようです。DX化が急務となる日本においてはDX人材が慢性的に不足しており、地方の人材を活用できるニアショア開発は人材不足を解決する手段としてオフショア開発とあわせて検討されるようになりました。

 

 

|地方のIT産業の状況 

ニアショアの需要が高まっているのに対し、地方のシステム開発の体制は、まだ十分に整備されているとは言い難い状況にあります。各県でのばらつきも見られます。

 

一方で、地域に根ざしたIT産業や情報産業の振興を掲げている自治体も少なくありません。

地方のシステム開発会社などがニアショアに対応し始めているのに加えて、大都市圏に本社を持つ企業が地方に開発拠点を作るケースも見られます。

 

|沖縄のIT産業の振興例 

沖縄では、1998年に「沖縄県マルチメディアアイランド構想」が策定されて以降、自治体と民間企業が共同し、ITを観光に次ぐ産業の柱にしようという取り組みがなされてきました。

 

実際に沖縄県内にIT関連企業の数が増え始めたのは、2000年代の前半頃からです。採用活動も活発に行われ、一時期は新卒の人気企業ランキングに多くのIT企業が名前を連ねていました。

 

2011年から2018年の間には、沖縄に立地するIT企業の数が倍増しています。2024年現在は、その頃の勢いは若干落ち着いていますが、IT企業が撤退しているというわけではなく、安定・定着している状況にあります。

 

沖縄のIT企業で特に多いのは、情報サービス業、コールセンター、BPOセンター、ソフトウェア開発会社、コンテンツ制作会社などです。元々、大都市圏の受託事業に携わる企業も多く、ニアショアの外注先として発展するベースがあったともいえます。

 

その背景には、沖縄県は出生率が高く人件費が割安で、地震が非常に少ないなどの条件がそろっていることが挙げられるでしょう。

 

 

|ニアショアのメリット 

企業がニアショアを活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?主なニアショアのメリットは下記の5つが挙げられます。

 

① コストが削減できる

② スムーズなコミュニケーションが可能

③ 地方の余剰人材を確保できる

④ カントリーリスクがない

⑤ 責任者を育成しやすい

 

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

 

 

|① コストが削減できる 

国内の地方都市へ開発を依頼するニアショアは、都市部よりも人件費が抑えられるため、コストの削減効果が得られます。

システム開発では、首都圏で開発する場合の概ね10~30%のコスト減が実現されるといわれています。

 

 

|② スムーズなコミュニケーションが可能 

オフショア開発と違い、ニアショア開発では慣習や言語、労働文化、時間の違いによるコミュケーションミスが起こりづらいというメリットがあります。

 

海外に業務を委託したほうがコスト削減効果は高い一方で、言語の違いから意思疎通が困難だったり、生活時間の違いでなかなか連絡がとりづらかったり、納期にルーズだったりと、コミュニケーション不足に陥りやすいというデメリットがあります。

 

ニアショア開発であれば、このようなトラブルの回避につながります。

 

 

|③ 地方の余剰人材を確保できる 

首都圏や東海、近畿などの大都市圏で不足しがちなエンジニアなどのIT人材も、地方であれば確保できる余地があります。

 

各地域の企業で採用・育成された人材のほかにも、UターンやIターンで地方に移り住むエンジニアもいます。ニアショア開発によって、IT人材の余剰があるエリアから不足しているエリアへと、供給ができるのです。

 

 

|④ カントリーリスクがない 

国際情勢の急変や、デモの発生、為替の変動による予想外のコスト増など、カントリーリスクがないという点もニアショア開発の大きなメリットです。

 

オフショア開発の主要国は中国や東南アジアですが、尖閣諸島問題で日中関係が悪化したり、タイで大規模なクーデターが起こって政情が悪化したりと、日本企業に影響を及ぼしたこともありました。

 

ニアショア開発であれば、このような予測不能のカントリーリスク発生の心配はありません。

 

 

|⑤ 責任者を育成しやすい 

オフショア開発の難しい点として、現場責任者を育成しづらいという点があります。海外で開発拠点を開拓する場合、現場責任者として現地に誰か派遣するか、現地で採用して一から育成していく必要があります。


また、どちらの選択肢をとるとしても、このときも文化や言葉の違いが壁になってしまいます。国内に開発拠点をおけば、責任者の派遣や育成も比較的スムーズに対応できます。

 

 

|ニアショアのデメリット 

ニアショアは企業に多くのメリットをもたらしますが、その反面デメリットもあります。主なデメリットは下記が挙げられます。

 

① コスト削減効果はオフショア開発に劣る

② 外注先の選定が難しい

③ 優秀な人材が限られる

④ 再委託の可能性がある

 

 

|① コスト削減効果はオフショア開発に劣る 

首都圏などと比べれば、ニアショア開発はコスト的に割安ではあるものの、オフショア開発並みというわけにはいきません。

首都圏で開発する場合、ニアショア開発では概ね10~30%のコスト減が実現すると前述しました。しかし、たとえばここ数年、オフショアの外注先としてよく利用されているベトナムの場合、概ね50~70%のコスト減が実現可能です。

 

 

|② 外注先の選定が難しい 

ニアショア開発の需要が増すにつれて、地方の優良企業の争奪戦も加速しています。

ITベンチャーなど少数精鋭の外注先はすでに多くの案件を抱え、スケジュールに空きがない傾向も見られます。そのため、いざ外注先を探そうとしても、見つけるのが難しいということがあるかもしれません。

 

 

|③ 優秀な人材が限られる 

地方の企業にも、もちろん優秀な人材はいますが、その絶対数は大都市圏に比べるとまだまだ少ないというのが現状です。

 

ニアショアによる開発・運用にはエンジニアが不可欠ですが、ほかにもクライアントとのコミュニケーションや折衝能力に長けたディレクターやプロジェクトマネージャー、受発注の橋渡しをするブリッジSEもまた重要な役割を担います。

 

優良企業に依頼できたとしても、その企業内において、優秀な人材が担当してくれるかどうかが課題となっています。

 

 

|④ 再委託の可能性がある

開発を委託されている企業が、再委託を行うことも考えられます。再委託とは、委託された企業がさらに別の企業に委託を行うことです。

業務が再委託されると、要件の認識にズレが生じたり、修正に時間がかかったりと、クオリティを担保することが難しくなってしまいます。再委託を事前に防止するには、契約書で再委託に関する事項を明確に記載しておくようにしましょう。



以下は、ニアショアとオフショアの主なメリット・デメリットをまとめた表です。それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、自社に最適な開発手法を選びましょう。

ニアショアとオフショアの特徴

 

 

|ニアショアの導入事例 

ニアショアの例として、三菱商事エネルギー株式会社から独立して、ガソリンスタンドに関わるWEBサービスを展開している株式会社カーフロンティアの事例を紹介します。

 

|ニアショアを選択した理由 

カーフロンティアでは、タイヤの取り付け予約やEC販売できるサービス、ガソリンスタンドや整備工場でオイル交換や洗車のWEB予約ができるサービスなど、複数のWEBサービスを展開しており、その開発は全て社外の開発ベンダーに委託していました。

 

しかし、外注任せだとサービスの成長が滞ってしまうという理由から、社内に開発部を作って内製化する方向性に転換。もともと30人規模から始まった会社で、たくさんの社員を置けるほど社内に席がないことから、ニアショアを検討します。

 

外注と内製開発のいいとこ取りをしたかったこと、もとからテレワーク制度を進めていたこと、社内にエンジニアがいて話をまとめやすかったという背景もあり、ニアショア形式でのエンジニア採用を決めました。

 

開発が必要になったときに、席や設備を用意することなく、声をかけるだけでチームを作れるため、スピーディな立ち上げが可能だったといえます。

 

 

|ニアショアを実施した結果 

カーフロンティアの担当者は、社内にエンジニアがいなければニアショアの成功は不可能だったと話しています。

 

開発業務のハンドリングは、専門知識を持ったエンジニアでなければ難しいこと、遠隔で対応してもらうのが難しい業務が出てきた場合に巻き取る必要があることから、エンジニアが中にいることが重要だったようです。

 

コストに関しては、オフショアのような大幅カットはやはり難しいと感じたようです。

 

エンジニアの単価は居住地ではなく、本人の技術力や実績によるところが大きいため、比較してもあまり意味がない。地方だからと言って安くなるわけではないため、コストを理由にニアショアを選ばない方がいいとの所感でした。

 

また、社内に席を用意するのも難しく、小規模でもスピーディに開発を開始したい企業にニアショアはおすすめといいます。

 

大規模な拠点を必要とせず小規模プロジェクトでコストをかけずに開始したいときには、ニアショアを選ぶメリットは多いと感じたようです。

 

 

|ニアショアとオフショアの活用ポイント

ニアショアとオフショアにはそれぞれメリットとデメリットがあることから、それぞれの特徴を把握してプロジェクトに応じてどちらを採用すべきか検討をする必要があります。

 

|ニアショアに向いているケース 

ニアショア開発に向いているケースは、下記のようなものが挙げられます。

 

・比較的小規模な開発案件で、大きなリソースは必要としない

・コミュニケーションを重視したい

 

このようなケースの場合、ニアショア開発は有効的といえるでしょう。特に、日本語でのスムーズなコミュニケーションに重点を置く場合はニアショアが向いています。

 

しかし、コストはオフショアほど抑えられない、また今後開発プロジェクトにおけるリモートワーク活用の一般化が進む場合、地域間のコストギャップが縮みコスト面でのメリットは減少していく可能性もあります。

 

 

|オフショアに向いているケース 

オフショア開発に向いているケースは、下記のようなものが挙げられます。

 

・比較的規模が大きく、潤沢なリソースを要する

・要求される技術レベルが高く、同時に一定量のリソースを必要とする

・コストをより抑えたい

 

オフショア開発であれば、日本では希少人材である経験豊富なハイスペックなエンジニアが豊富にいるため、エンジニアの質を求める場合には日本国内に比べて確保の難度を大きく落とすことが可能です。

 

コミュニケーションが大きな課題となるものの、近年ではコミュニケーションや管理の質を高めるために、以前にも増して多くの日本人を抱えるオフショア開発企業が目立っています。

 

また、ベトナム人日本語話者の確保や社内での語学研修の促進、スクラムなどの方法論の採用といった様々な取り組みを通じ、コミュニケーションや管理面における課題感は以前より小さくなってきていると思われます。

 

弊社VNEXTでも、コミュニケーションに力を入れており、在籍するブリッジSEの半数は日本人スタッフが占めており、また日本拠点に上流から対応可能な日本人PMが在籍しており、お客様のご要望に応じた柔軟な開発体制を構築しています。

 

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|まとめ 

ニアショアには複数のメリットがあり、大都市圏の企業が抱える課題を解決できる可能性が高いため、その需要は今後ますます増していくものと考えられます。

 

しかし、オフショア開発と比較すると「優秀なITリソースの確保」や「大きなコスト削減」は難しい点もあります。

 

そのため、海外の開発企業とのやりとりに不安があるということであれば、管理はニアショアの開発企業が担当し、実作業はオフショア側で行うというハイブリッド型も選択肢となり得ます。

 

ニアショアとオフショアそれぞれの特徴やメリット・デメリットをしっかりと把握し、自社に適した形を模索することが大切です。



オフショア開発を検討する際は、下記の「オフショア開発チェックシート」を参考にしてください!オフショア開発先となる国の特徴や開発会社の選定方法などをご紹介しています。(下記バナーから無料でダウンロードできます)

オフショア開発チェックシート