VNEXTの会社紹介資料
2023/12/22
システム関連の話をしていると、「マイグレーション」という言葉を耳にすることがあります。
情報システムにおけるマイグレーションとは、一言で表すと「既存のシステムを新しい環境に移行すること」です。
今やマイグレーションは、DX推進にも欠かせない要素となっています。
本記事では、マイグレーションの意味や種類、その目的からメリット、マイグレーションを成功させるためのポイントなどについて解説していきます。
目次
|マイグレーションとは?
マイグレーション(Migration)とは、一般的には「移動・移住・移転」という意味をもった言葉です。
IT分野でのマイグレーションとは、既存システムやソフトウェア、データなどを別の環境やプラットフォーム、バージョンへ移行することを意味します。
具体的には、メインフレーム系で稼働していたシステムをオープン系のシステムへ移行するなどが該当します。
たとえば、近年はクラウド化の進展に伴い、長年使用している古いオンプレミス環境からクラウドサービスなどのような新たな環境に移行させることが
主流になってきています。
マイグレーションは、急速に取り組みが進んでいるDXにも深く関わり、レガシーシステムを利用している企業にとっては検討すべき手段でもあります。
|コンバージョンとモダナイゼーションとの違い
マイグレーションと混同されやすい言葉で、「コンバージョン」と「モダナイゼーション」があります。
これらとマイグレーションの違いを簡単に解説します。
|コンバージョンとは
コンバージョン(Coversion)とは「変換・転換・転化」という意味を持ち、データやファイルを現在の形式から別の形式に転換することです。
マイグレーションは、現在の環境から新しい環境への移行であるのに対し、コンバージョンは、異なる仕様のものへの転換を表します。
|モダナイゼーションとは
モダナイゼーション(Modernizatio)とは「現代化」という意味を持ち、最新技術やビジネス環境に合わせてシステム全体を最適化することです。
モダナイゼーションは、基本的にレガシーシステムを刷新することを指しますが、マイグレーションは単に既存システムを別の環境へ移行することを
指します。
言葉 | 概要 |
マイグレーション | 現在の環境から新しい環境へ移行する |
コンバージョン | 異なる設計のものへ入れ替える |
モダナイゼーション | システム基盤を新しくし、機能を向上させる |
|マイグレーションの目的
マイグレーションを行う目的は、主に下記の5つが挙げられます。
ー 2025年の崖に対する対策
ー ランニングコストの削減
ー セキュリティや故障リスクの回避
ー ブラックボックス化を防ぐ
ー 経営環境の変化に対応する
それぞれを詳しく見ていきましょう。
|2025年の崖に対する対策
経済産業省のDXレポートにおいて、「2025年の崖」を克服することの重要性を説明しています。
この「2025年の崖」とは、レガシーシステムに依存し続けることで、企業がDXの波に乗り遅れ、競争力を失うリスクを指しています。
2025年の崖を超えなければ年間で最大12兆円の経済損失があると予測されていますが、大きな原因となるのがレガシーシステムです。
マイグレーションは、レガシーシステムからの脱却する手段として非常に重要です。
|ランニングコストの削減
多くの企業は「2025年の崖」に直面しており、いかにレガシーシステムから脱却してDXの実行に至るかが課題となっています。
レガシーシステムを運用し続けることで、複雑化・ブラックボックス化したシステムの維持管理費が高額になり、企業のIT予算を9割以上圧迫する
恐れがあります。
さらに、システムが古くなってメーカーのサポートも終了すると、自社での保守・運用が必要になり、メンテナンス費用がさらにかさみます。
こうした点から、マイグレーションにより新しいシステムに移行することで、運用・管理の費用を大きく削減できることが期待できます。
|セキュリティや故障リスクの回避
古いシステムを使い続けていると、現行システムのサポートの期間終了やソフトウェアなどの更新停滞で、セキュリティリスクが生じます。
そうなると、セキュリティホールが放置され、情報漏洩やデータ損失のリスクも高まります。
マイグレーションによって新しい環境へ移行することで、OSやソフトウェアのバージョンが更新され、最新のセキュリティ対策に置き換える
ことが可能です。
これにより情報セキュリティ面が改善され、取引先や顧客などの大切な情報を守ることにつながります。
また、物理サーバーやストレージの劣化・破損でデータが失われるリスクも避けられます。
|ブラックボックス化を防ぐ
古いシステムは、独自カスタマイズによって複雑化していたり、古いプログラミング言語が使用されているケースは少なくありません。
古いシステムの運用・保守の知識が属人化している場合、担当エンジニアが退職してしまうと誰もメンテナンスができなくなる可能性があります。
こういった事態を防ぐ手段としてマイグレーションがあり、最新システムへの移行でブラックボックス化を防止することができます。
|経営環境の変化に対応する
近年は、ビジネス環境や顧客のニーズが変わりやすい時代です。
移り変わっていく環境や顧客ニーズに柔軟な対応をしていくためには、新しいシステムへの移行が必要です。
多くの場合、レガシーシステムでは最新技術の導入が難しいため、今のビジネススタイルに適合しなくなっています。
それにより、市場競争に敗れ、撤退を余儀なくされるといったリスクがあります。
マイグレーションにより最新技術を取り入れれば、成長を遂げて競争力を上げることが可能です。
|マイグレーションの種類
一口にマイグレーションといっても、移行する対象や移行方法によって種類がさまざまです。
以下では、代表的なマイグレーションの種類を4つご紹介します。
|レガシーマイグレーション
レガシーマイグレーションとは、古い設計や仕様に基づいて構築されたシステムや老朽化、ブラックボックス化してしまったシステムを新しいシステムへ
移行するものです。
具体的には、レガシーシステムや事務処理用途に特化した中型コンピュータのオフコンなどで稼働しているシステムを、WindowsやUnix系OSをベースと
したシステムに移行することを意味します。
|データマイグレーション
データマイグレーションとは、あるシステムから別のシステムへデータを移すことです。
具体的には、古いハードウェアのデータを新しいハードウェアに移行します。
使用するソフトウェアやデータ形式が変わらない場合は、ファイルの複製や移動などで済む場合もありますが、多くの場合はデータを新しい環境に
適した形式に変換する必要があります。
社内で運用するサーバーなどは、耐用年数が経過する頃に、データマイグレーションを実施する必要があります。
|クラウドマイグレーション
クラウドマイグレーションとは、自社で管理しているデータセンターなどの物理サーバー(オンプレミス環境)から、 AWSやMicrosoft Azureなどの
パブリッククラウドにITシステムを移行することです。
クラウドマイグレーションは適切な方針、適切なクラウド選択を行えば、コストの大幅カットやサービスの高速アップデートといったクラウドのメリッ
トを十分に得ることができます。
|ライブマイグレーション
ライブマイグレーションとは、仮想サーバー上でソフトウェアを稼働した状態で、別のハードウェアと同期を取りながらデータを移行することです。
ライブマイグレーションでは、ソフトウェアを停止せずにハードウェアの入れ替えや変更など、柔軟に対応することが可能です。
一方で、ネットワークの瞬断が発生するなど、技術的に制約があるなどの課題があります。
|マイグレーションの手法
マイグレーションを行う手法は、主に以下の4種類あります。
移行対象や範囲が異なるため、自社の目的や課題に合わせた手法を選ぶことが大切です。
ー リホスト
ー リライト
ー リビルド
ー リファクタリング
それぞれについて詳しく説明していきます。
|リホスト:インフラ刷新
リホストとは、使用する言語やアプリケーションの仕様を変更せずに、プラットフォームだけを移行する手法です。
一気にマイグレーションを行うのに比べ、移行の負荷が少なく、既存プログラムを継承できるメリットがあります。
また、ソフトウェアを変えず、ハードウェアのみ移行するため、短期間で移行が可能です。
しかし、アプリケーションの修正を最低限に抑えて利用するため、最新の技術や新しいビジネスモデルに対応できないなど、業務面で遅れをとって
しまう可能性がある点がデメリットでもあります。
|リライト:プログラム言語の変更
リライトとは、仕様は変えず、プログラム言語だけを書き換えた上でプラットフォームを移行する手法です。
リホスト同様、既存のプログラムの継承に加え、新しい言語に書き換えるため、新たなテクノロジーの恩恵も受けやすくなります。
また、システム効率、セキュリティの向上などのメリットもあります。
一方で、アプリケーションの変更は伴わないため、新たなプラットフォームとの連携ができないというデメリットもあります。
|リビルド:システムの再構築
リビルドとは、レガシーシステムに含まれる問題を受け継がないようにするため、システムを全面的に作り直し、データのみを移行する手法です。
システムを再構築することにより、新機能が利用可能で、新しい市場へ対応できるメリットがあります。
一方で、大きな移行が必要となるため、期間や費用など多大なコストがかかるデメリットがあります。
|リファクタリング:再設計
リファクタリングとは、プログラムの内部構造を整理し、特定のエンジニアしかメンテナンスを行えない状況を変える手法です。
既存のアプリケーションを見直し、メンテナンスしやすい構造・設計となるようコードを書き換えて、可読性や保守性、拡張性を向上させます。
リファクタリングによって整理されれば、ブラックボックス化や知識・技術の属人化を回避できるメリットがあります。
一方で、正しいコードが入力されていないと、正しくコードが出力されずに、バグを起こしてしまい、復旧に時間がかかることがデメリットです。
|マイグレーションを行うメリット
マイグレーションを実施することで、セキュリティやリソースの効率化などのメリットがあります。
以下ではマイグレーションを行う、主なメリットを4つ紹介します。
|生産性の向上
マイグレーションを実施することで、生産性が向上します。レガシーシステムからの脱却により、業務効率化が期待できるからです。
たとえば、現行システムで動作の遅さや機能不足を感じている場合、新システムに切り替えることで業務時間を短縮し、生産性を高められます。
また、クラウドやデータセンターを活用することで、管理作業の手間を減らし、より生産性の高いコア業務に集中できます。
|セキュリティの向上
現行システムが古いと、セキュリティ上のリスクが高まることが懸念されます。
たとえば、老朽化を放置していると、サーバーやストレージの故障や劣化によってデータを失う恐れがあります。
また、ソフトウェアなどのサポートが終了しているのに古いシステムを使い続けていると、セキュリティリスクも高まります。
マイグレーションを行えば、新しい環境への移行によりセキュリティ機能を強化し、脆弱性を取り除くことが可能です。
そうすることで、最新のセキュリティ対策を利用できるようになり、データ損失のリスクの軽減につながります。
|コスト削減
エンジニア不足やシステムの複雑化により、レガシーシステムの運用・保守には、多額のコストがかかるようになります。
さらに、レガシーシステムの運用・保守に資金や人材が割かれることで、新たなデジタル技術を活用する IT 投資にリソースを振り向けることが
できません。
マイグレーションでシステムをオープン化し、学習しやすいオープン系開発言語を使用することで、運用・保守やメンテナンスコストを大幅に削減
可能です。
この部分のコストが削減できれば、これまでかかっていたコストやリソースを新たなIT投資に充てることができるため、DXへの取り組みも進みます。
|既存環境の有効活用
マイグレーションでは、既存システムのソースコードや構成、データを有効活用できます。
これはゼロからの新規開発とは異なり、現行システムを活かすアプローチです。
移行に伴う変更点が少ない場合は、業務への影響を最小限に抑えられます。
また、既存のノウハウや使い慣れたユーザーインターフェースを活かして運用するため、従業員の学習コストも軽減されます。
新しいシステムをゼロから構築するよりコストも安く済み、低リスクな点がメリットです。
|マイグレーションの抱える課題
マイグレーションでは、既存のシステムで行っていた業務が同じようにできることが期待されていますが、マイグレーションを行うにはさまざまな
課題があります。
ここではマイグレーションの代表的な課題を3つ紹介します。
|開発に関わった人がいない
既存のシステムをマイグレーションする場合、既存システムを理解する必要があります。
しかし、マイグレーションの対象となるシステムが10年以上長い年月を経ていることも珍しくありません。
そして、長い年月が経った既存システムに存在する機能の開発経緯を確認しようにも、システム開発時に関わった社員やエンジニアは退職していたり、
ドキュメントが整備されていない可能性もあります。
そのため、マイグレーションを行うためには、既存システムのプログラム解析はもちろん、存在する機能がどのような業務やビジネスで使用されている
のかなどの知識を持ち合わせたエンジニアの存在が必要です。
|ドキュメントが残っていない
マイグレーションを行う場合、既存システムの機能を把握する必要があります。
しかし、レガシーシステムの場合、設計書をはじめとしたドキュメントが存在しないことも珍しくありません。
ドキュメントが存在していたとしても、昭和時代に開発されたメインフレームやオフコンのシステムのドキュメントはほとんどが手書きであるため、
文字が読めないこともあります。
また、機能追加や機能改修時にドキュメントの更新を行っていたため、ドキュメントに記載されている内容と実際に動作している機能の内容に乖離が
あることも珍しくありません。
このように、ドキュメントが残っていない、あるいは整備されていないと調査に時間を要することになり、マイグレーションへの着手にも遅れが出て
しまいます。
|テストにコストがかかる
既存システムのマイグレーションを行う際、多くの場合は「既存システムの機能が新システムに引き継がれている」ということを前提にします。
この前提のとき、テストとして用いられるのが「現新比較テスト」です。
これは既存システムと新システムで同じデータで同じオペレーションを行い、同じ結果となるかどうかを確認するテストになります。
そして、マイグレーションを行う際の「現新比較テスト」のテスト対象範囲は全機能です。
全機能の現新比較テストを行う場合、テスト項目が膨大になるとともに、テストに要する手間やコストも膨大になります。
|マイグレーションを成功させるためのポイント
最後に、マイグレーションを成功させるために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
|現状の課題と現行システムを正確に把握する
現行システムを詳しく調査し、システムの利用方法、運用方法を可視化することで、何が課題なのか、どこに問題があるかが見えてきます。
現状の課題や業務で抱える問題を正確に把握できれば、どのシステムを移行すべきか、適切な方法は何かが明確になります。
課題や問題点の洗い出しをする際は、システム・アプリケーションやデータ、ファイルなどを細かくチェックすることが大切です。
現行システムの正確な理解がないと、新システムが動作しなかったり、データの不一致でエラーが発生したりするリスクがあります。
丁寧な事前準備が、移行漏れや移行の失敗を防ぐことにつながります。
|スケジュールを立て入念な準備を行う
当日の作業が最小限になるように、スケジュールを立て、事前にできることは進めておきましょう。
スケジュールを丁寧に組むことでシステム停止時間が短くなり、機会損失を減らす効果があります。
また、現行のIT資産の詳細な可視化が重要です。
計画書の不備や曖昧さは移行に悪影響を及ぼしかねないため、細かく作成することが大切です。
事前準備によって、早い段階でシステムの移行に関する課題に気づけたり、トラブルが発生しても本番前に対処ができます。
|検証は本番環境に近づける
本番前の移行リハーサルを本番環境に近い状況で行うことが、成功のためには重要です。
本番環境と異なるテスト環境でリハーサルを行うと、本番で予期せぬ不具合が生じるリスクが高まります。
移行のリハーサルを行うことで、事前のテスト段階で不具合や問題点を発見し、対処することで安心してシステム移行日の当日を迎えられます。
リハーサルを行う際には、サーバーやハードウェアのスペック、データ量、ネットワーク環境といった条件が変わらないように注意しましょう。
|まとめ
マイグレーションとは、ゼロから新しいシステムを構築するのではなく、システムやデータなど新しい環境に移行することです。
そのため、新しいシステムを構築する場合と比べて、コストを抑えることができ、これまでのノウハウを活かすことも可能です。
さらに、完全に新しいシステムではないため、従業員が慣れるまでに時間がかからず業務効率化にもつながります。
近年は、DX推進によるデジタル化が進んでおり、レガシーシステムの見直しや刷新がカギを握っています。
このため、戦略的マイグレーションを検討してみてはいかがでしょうか?
|マイグレーションを行うならVNEXT
弊社VNEXTでは、さまざまな分野でのマイグレーションの実績が多数あります。
マイグレーションを実施するためには、専門知識を持ったエンジニアが必要になったり、ドキュメントの整備がされておらずシステムの把握に時間を
要するなどの課題があります。
自社にリソースやノウハウがない場合は、外注することをおすすめします。
「マイグレーションを行いたいけど、リソースが不足している」
「短期間かつ低コストで新しい環境を手に入れたい」
「技術的な制約や性能に限界があり、どうしたらよいか分からない」
このようなお悩みやマイグレーションの実施を検討されている方は、ぜひVNEXTへご相談ください!
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