VNEXTの会社紹介資料

資料ダウンロード

ホーム > V-BLOG > 技術・サービス

SAPの『2027年問題』とは?対応策と今すべきことを詳しく解説!

2024/01/19

日本国内だけではなく、世界中の企業が利用しているSAP社のERP(SAP ERP)。

 

近年、そのSAP製品ユーザーを悩ませているのが、2027年末に差し迫った『SAP ERP 6.0』の保守サポート終了です。

 

この保守サポート終了によって起こりうる問題を「2027年問題」と呼びます。

 

本記事では、SAPの2027年問題を紐解きながら、その対応策企業が今すべきことなどを詳しく解説していきます。

 

 目次 

● SAPの2027年問題とは?

 ▶️ ERPの代表格「SAP」とは

 ▶︎ 保守期限が延長になった理由

● 2027年問題への対応策は3つ

 ▶︎『SAP S/4HANA』へ移行

 ▶︎ 継続して利用

 ▶︎ 他のERPサービスへ移行

● 次世代のERP『SAP S/4HANA』とは

 ▶︎ データの処理速度が速い

 ▶︎ リアルタイム分析とレポーティング

 ▶︎ ユーザーフレンドリーなUI

 ▶︎ オンプレミス・クラウド・ハイブリッドの自由な選択

 ▶︎ 充実した新機能

●『SAP S/4HANA』へのマイグレーション方法

● マイグレーション検討時のポイント

 ▶︎ 人材不足への対応

 ▶︎ システムの標準機能に業務を合わせる

● 2027年問題に向けて今すべきこと

● まとめ

● SAP 2027年問題の対策はVNEXTにお任せ!

 

|SAPの2027年問題とは? 

「SAP 2027年問題」とは、SAP社が提供しているERP(Enterprise Resource Planning/企業資源計画)ソリューション『SAP ERP 6.0』(ECC 6.0)の標準保守(メインストリームサポート)が2027年末に期限を迎えるという問題です。

 

サポート期間が過ぎてしまうと、新機能の追加がされないことはもちろん、修正プログラムの提供やシステム品質の改善などのサポートも受けられなくなります。

 

システムを最新の状態に保つことができないため、セキュリティリスクが増大したり、トラブルが起きた際も対応できなかったり、業務に支障をきたす可能性があります。

 

このようなリスクを避けるため、サポート期間内に新しいシステムへ移行するなどの対策が求められているのです。

 

対象となるSAP製品を使用している企業は、最新の基幹システムパッケージである『SAP S/4HANA』に移行するなどの経営判断が迫られています。

 

しかし、システム移行は、手間・時間がかかる移行作業を通常業務と並行して行わなければいけないため、企業の負担が大きく、なかなか移行に着手できていない企業も多いのが実態です。

 

|ERPの代表格「SAP」とは 

『SAP ERP』や『SAP S/4HANA』は、ドイツに本社を置くSAP社が提供する基幹システムのERPパッケージソリューションです。

 

世界中の大企業が社内の情報を効率的に管理するために利用しているSAP社のERPソリューションは、効率的な企業活動に不可欠なERPの代表格となっています。

 

その最大の特長はグローバル対応の強さです。

世界各国で利用されているSAP製品は、諸外国の法令、商慣習への対応にも優れているため、グローバル展開を狙う企業にとっては特に代替が効かない存在といえます。

 

▶︎【SAPとは】基礎知識とERPとの関係性、SAPのメリット・デメリットを解説!

 

|保守期限が延長になった理由 

『SAP ERP 6.0』の保守期限はもともと2025年に終了する予定でしたが、SAP移行作業をするエンジニア不足が深刻であることが延長になった理由の1つです。

 

現在、日本国内ではIT人材不足が深刻化しており、2030年にはIT人材が79万人不足すると予測されています。その中でも、SAP開発人材は1万人以上も不足する状況に陥る可能性が出ています。

 

さらに、『SAP S/4HANA』は『SAP ERP 6.0』と比較して仕様が大幅に変わっていることにより、移行に膨大なコストがかかることも要因の1つとなっています。

 

|2027年問題への対応策は3つ 

「SAP 2027年問題」への対応策は、下記の3つが挙げられます。

 

|『SAP S/4HANA』へ移行 

SAP社は、『SAP ERP 6.0』から最新版『SAP S/4HANA』への切り換えを推奨しています。

 

SAP ERP 6.0と比較しても優れた機能があり、クラウド化していることからスムーズな導入が可能で、ビジネスの意思決定をしやすいことが特徴です。

 

一方で、システムを移行する際に、要件定義やアセスメント、PoC、アドオンの最適化などの高度なプロセスがあり、発生するさまざまなコスト(資金的/人的/時間的)を踏まえたデジタル戦略の構想策定が求められます。

 

|継続して利用 

既存の『SAP ERP 6.0』を使い続けるという判断も可能です。

 

現在の保守基準料金に2%追加することで、保守期限を2030年末まで伸ばす延長保守サービスも用意されています(Enterprise Supportだけでなく、Standard Supportのユーザーにも提供。ただし、“EhP6”以上を導入していることが条件)。

 

継続して試用する場合、これまでと同様にシステムを使えるため、業務面で混乱が起きないというメリットがあります。

 

ただし、機能が拡張されることもないため、競合他社との競争に後れを取る可能性があります。

 

また、あくまで期限が延長されるだけであり、2030年に向けて対策の必要があることは変わりません。

 

|他のERPサービスへ移行 

このタイミングでSAP製品の利用を終了し、クラウドベースのERPサービスも含めた幅広い選択肢の中から新たな基幹システムを選択するという方法もあります。

 

他のERPであれば、最新のIoT技術を導入するなどシステムの再構築をゼロからすることが可能です。

 

しかし、新たにERPシステムを選んだり、開発したりするプロセスにおいて高額なコストが発生します。

 

また、過去に蓄積したデータや知見、ノウハウが活かせなくなる恐れもあるでしょう。

 

|次世代のERP『SAP S/4HANA』とは 

『SAP ERP 6.0』からの移行先として推奨されている『SAP S/4HANA』は、2015年にリリースされて以降、アップグレードで進化を続けている最新世代のソリューションです。

 

従来のSAP ERPとの比較は下図のとおりです。

 

ここでは、『SAP S/4HANA』の代表的なメリットをご紹介します。

 

|データの処理速度が速い 

『SAP S/4HANA』は、「SAP HANA」と呼ばれるカラム型インメモリーデータベースで稼働します。

 

全てのデータをメモリー上に保有することで、ハードディスク上にデータを保有する場合と比べて、飛躍的に高速なデータ処理を実現しました。

 

また、さまざまな観点から情報を可視化できるため、必要な情報に素早くアクセスし、スピーディな意思決定をサポートします。

 

|リアルタイム分析とレポーティング 

従来のSAP ERPソリューションで分析やレポーティングを行おうとすると、個別に構築したDWH(Data Warehouse)が必要でした。

 

一方、『SAP S/4HANA』は分析もレポーティングもすべて同じ基盤で行え、経営意思決定に欠かせない判断材料をスピーディに調達します。

 

また、『SAP S/4HANA』では、オンライントランザクション処理(OLTP)機能とオンライン分析処理(OLAP)機能が統合されていることで、リアルタイムなデータ利用が可能です。

 

さらに、構造化データ(行列の概念を持つ整理されたデータ)だけでなく、規則性のないドキュメントデータや地理空間データなどといった非構造化データに対応している点もポイントです。

 

機械学習やテキストマイニングなどの機能を活用すれば、高度な分析やリアルタイムな予測をビジネスの現場に投入できます。

 

|ユーザーフレンドリーなUI 

『SAP S/4HANA』で新たに採用された「SAP Fiori(フィオーリ)」というUI(ユーザーインターフェース)は「機能中心からユーザー中心へのシフト」を掲げており、ユーザー目線に立った直感的な操作を提供します。

 

実装されている多くのアプリを各自の用途に合わせて利用でき、組織のデータ活用推進や生産性向上への貢献が期待できます。

 

さらに「SAP Fiori」は、マルチデバイス・マルチブラウザに対応している点も特徴で、スマートフォンやタブレットなどの端末の種類、Google ChromeやFirefoxなどのブラウザの種類を問わずに利用可能です。

 

|オンプレミス・クラウド・ハイブリッドの自由な選択 

『SAP ERP 6.0』では、オンプレミス環境での導入を前提としていました。

 

一方で、『SAP S/4HANA』は時代の変化に対応し、AWS、Google Cloudといったパブリッククラウドのほか、パートナー企業が提供するマネージドクラウド上でも動作させられるようになり、また、ハイブリッドクラウド運用も可能です。

 

クラウドを効果的に活用すれば、迅速な導入や事業規模に合わせたスケールアウトなどのメリットも期待できます。

 

|充実した新機能 

『SAP S/4HANA』は、Central Financeをはじめとして充実した新機能があります。

 

「SAP S/4HANA Cloud」において、ビジネスパートナーテーブルの利用しているデータに対して、プライバシー関連手続きを自動化できるようになりました。このことにより、潜在的なプライバシーリスクを自動的に検出できるようになったのです。

 

さらに、販売領域において受注時の製品提案や受注登録など機械学習を活用した機能が増えました。受注処理を自動化することで、業務効率化につなげたり機会損出を削減したりすることが可能です。

 

そして、売掛金処理をはじめ、6つのアプリが追加されています。

分割支払いの登録を支払い約束としてできたり、回収請求書においてのカスタム項目など『SAP ERP 6.0』と比較して柔軟な対応ができるようになりました。

 

|『SAP S/4HANA』へのマイグレーション方法 

『SAP ERP 6.0』から『SAP S/4HANA』へ移行(マイグレーション)する際には、アセスメントの実施から始まります。

求めるビジネス要件に対してどのような移行手段が採択可能か費用を含めて調査するためです。

さらにPoCによる実環境の検証を経て、ようやく本格的なシステム移行へと進みます。

 

採択するマイグレーションの手法には、大別して以下の3つのパターンがあります。

 

|Brown Field(コンバージョン方式)

Brown Field(ブラウンフィールド)は、既存の要件・環境を活かしつつデータを変換して『SAP S/4HANA』へ移行する手法です。

 

『SAP ERP 6.0』からの変化が少ない移行方法であるため、ユーザーへの影響や移行コストを最小限に抑えることが可能です。

 

しかし、現行業務の見直しが行われず、負の資産も引き継がれるため、『SAP S/4HANA』が提供するさまざまな機能やサービスのメリットを十分に享受できない可能性があります。

 

|Green Field(リビルド方式)

Green Field(グリーンフィールド)は、『SAP S/4HANA』で新たな環境を1から再構築する手法です。

 

大がかりな基幹システム改修に合わせて業務プロセスを見直すことが可能であるため、現在のビジネスプロセスに不満点が多い場合にメリットがあります。

 

SAP社が積み上げたノウハウをもとにした最適解である「SAPベストプラクティス」というテンプレートに合わせて構築すれば、先進的で効率的なプロセスを自社ビジネスに採り入れ標準化することができます。

 

しかし、新たにシステムを作り直すという工程の性格上、業務への影響は大きく、コストと時間、リソースが必要になる点を留意する必要があります。

 

|BLUEFIELD 

BLUEFIELD(ブルーフィールド)は、独SNP社*のツールを使用する手法です。

 

これは、データとシステムを分離し、システムを先に『SAP S/4HANA』化します。

その後、業務に必要なデータを選択的かつ段階的に移行します。

 

差分管理機能を活用し、データ部分を複数回に分けて移行させる手法を用いることで、システムのダウンタイムをほぼゼロに抑えながら、『SAP S/4HANA』への移行を実現できることが特徴です。

 

SNP社によれば、「BLUEFIELD」を採用することで移行に必要な時間を1/4に削減することが可能です。

 

* SNP社は、SAPのゴールドパートナーであるとともに、SAP S/4HANA® Selective Data Transition EngagementというS/4HANAのデータ移行エキスパートのコミュニティに加盟しています。

 

|マイグレーション検討時のポイント 

『SAP S/4HANA』へのマイグレーションには、難易度とリスクの高い業務が数多く発生します。

 

たとえば、独自開発でブラックボックスと化した数々のアドオンの移行や、新たなデータベース形式のためのデータ連携、文字コード変換など専門知識が求められる業務が存在します。

 

また、基幹システムの改修には、必要な機能を精査するために事業部をまたいだ綿密な連携と、それぞれの業務に対する深い理解が求められます。

 

そのため、マイグレーションを検討する際は、以下の2つのポイントを押さえておきましょう。

 

|人材不足への対応 

『SAP S/4HANA』へのマイグレーションについて、とりわけ深刻な問題が、専門人材・パートナー企業の早期確保です。

 

現状、『SAP S/4HANA』に長じたコンサルタント、エンジニアは現時点でも引く手あまたで確保が難しいという状況です。

それを裏付けるように、SAP人材を育成するプロジェクトが発足しています。

 

いざ、マイグレーションを進めようとした時に人材が不足していると、移行の遅延や不具合のリスクが生じ、機会損失やシステム停止による信頼の失墜を招く恐れがあります。

 

企業の選択肢としては、社内でSAP人材を育成するか、外部に委託するかのどちらかになります。

 

SAP人材は、今や貴重な存在ともなっているため、外部に委託する際は一刻も早い経営判断をし、パートナー企業を見つける必要があります。

 

|システムの標準機能に業務を合わせる 

SAP社は『SAP S/4HANA』へのマイグレーションに向け、「Fit to Standard」という概念を提唱しています。

 

基本パッケージで実現できない一部の機能をアドオンで実現する「Fit & Gap」で生まれた独自性の強いアドオンは、将来的なバージョンアップの妨げになりかねません。変化への柔軟性を失い、方針変換の際にさらなるコストと時間、リソースが必要となることは問題となります。

 

「Fit to Standard」は、システムパッケージの標準機能に、自社業務を合わせていくという方法論です。

 

システムのバージョンアップに合わせてアップデートすることで、最新機能による最適化の恩恵を享受することができます。標準化を徹底することで、時代の変化へ追随しやすくなる点は大きなメリットです。

 

|2027年問題に向けて今すべきこと 

システムの移行内容や方法によっても変わりますが、システム移行には通常数カ月の準備期間が必要になります。

そのため、2027年に向けて今から動き出すことが重です。

 

具体的には、現行システムの整理業務の標準化の2点から取り組むとよいでしょう。

 

|現行システムの整理 

まずは、現行システムの整理から行いましょう。

 

現行システムはどのような設計になっているのか、どのような業務にシステムを利用しているかを洗い出し、整理していきます。

 

また、システムを使用する中でどのような課題があるかも現場社員にヒアリングすることも大切です。

 

課題を把握することによって、必要な機能や要件が明確になり、システム選定の判断基準になります。

 

|業務の標準化 

同時に、業務の標準化も進めておきましょう。

 

業務標準化とは、設定したルールに沿って、誰もが同じように業務を行えるように各業務の手順を整理することです。

 

従業員の業務フローが統一化され、業務の属人化を防ぐだけでなく、組織全体の業務品質が安定します。

 

また、業務のムダを省くことによって、作業時間の削減や生産性向上などの効果も期待できます。

 

|まとめ 

2027年問題によってSAPユーザーは、以下の選択肢から決断する必要があります。

 

・新たなシステムへ移行する(『SAP ERP 6.0』から『SAP S/4HANA』へ)

・現行システムの保守期限を延長して使い続ける

・他のERPへ移行する

 

システムの移行には時間がかかるため、システム移行を考えている場合は、今から準備を始めることが重要です。

 

自社がシステムによってどのように業務を行っていきたいか、どのようなシステムが必要なのかを改めて見直すことから始めていきましょう。

 

2027年問題に対しての対策としてシステムの見直しを行うことは、自社の業務の無駄をなくし、よりスムーズな業務フロー構築のきっかけにもなります。

 

また、IT人材の不足が危惧される中、システムの移行を社内のみで行うことが難しいケースもあります。その場合、外部へ委託することになりますが、SAPに強い人材がいるのかSAPに関する実績があるのかを必ずチェックしましょう。

 

この「SAP 2027年問題」を機に、システムや業務の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

 

|SAP 2027年問題の対策はVNEXTにお任せ!

弊社VNEXTは、SAPの認定パートナーであるとともに、これまでSAP開発・導入支援をはじめ、マイグレーションの実績が多数あります。

 

SAP人材が不足している中、ベトナムオフショアを活用することで、SAPに強いリソースを確保できます。

 

VNEXTでは、「SAPラボチーム」を構築しているので、コンサルタントからプロジェクト進行までスムーズに進めることが可能です。

 

SAP 2027年問題に直面している企業様は、一度VNEXTまでご相談ください!

▶︎ VNEXTのSAP開発・導入支援サービス詳細はこちら