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2024/03/08
Web3.0を実現する仕組みの1つとして注目されている「DAO」ですが、最近耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか?
DAOとは、特定の所有者や管理者が存在せず、参加者同士の投票で意思決定し、事業やプロジェクトを推進する組織を意味します。
本記事では、DAOの意味や特徴、活用メリットや問題点、DAOの事例などについて解説していきます。
目次
|DAO(分散型自律組織)とは?
DAOとは、Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の頭文字を取った言葉で、読み方は「ダオ」です。
特定の所有者や管理者が存在せず、参加者同士の投票で意思決定し、事業やプロジェクトを推進する組織のことを指します。
DAOは、ブロックチェーン技術を活用した次世代のインターネット「Web3.0」を実現する仕組みの1つとして注目されています。
DAOでは、組織の意思決定はメンバーによる投票で行います。投票内容の結果は、ブロックチェーン上のルールであるプログラムに従い、自動的に実行し表示可能です。
ブロックチェーンの多くは、オープンソースとしてプログラムのソースコードが公開されているため、ブロックチェーン上のルールであるプログラムは、誰もが見える状態です。
このような仕組みのため、誰かが途中で投票に対する改ざんや不正を行うことは不可能です。さらに投票結果はブロックチェーンに記録され続けます。
ルールや結果を誰もがいつでも参照できるので、透明性が高いことはDAOの特徴です。
従来の組織と違い、特定の所有者や管理者が存在せずとも、民主的な組織運営を可能にします。
|DAOと従来の組織構造との比較
DAOの全体像をつかめた所で、DAOと伝統的な組織との構造の比較について、具体的に見ていきましょう。
イーサリアム財団は、公式ホームページにてDAOと従来の組織構造との比較を、以下のような表で表しています。
参考:イーサリアム財団 ― Why do we need DAOs?
この表を要約すると、以下のようになります。
― DAOは組織の意思決定はコミュニティの投票によって自動的に集計および実行が成されるため、民主制や情報の透明性が高い組織である
― 伝統的な組織は上記のプロセス中に、人為的な介入が発生しやすい組織である
DAOの組織構造として挙げられている点において、「仲介者なし」、「自動的に処理」といったワードが散見しています。
このワードが意味しているのは、DAOの運営においてスマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動的に履行する仕組み)が動作しているということです。
DAOと伝統的な組織の主な相違点のひとつは、スマートコントラクトの有無であると言うこともできます。
|DAOの仕組み
DAOの仕組みとして、以下の3つがあります。
― ブロックチェーン
― スマートコントラクト
― ガバナンストークン
それぞれそのようなものか詳細を確認していきましょう。
|ブロックチェーン(管理者がいなくてもセキュリティを保証できる)
ブロックチェーン技術とは、ブロック(取引記録)を分散的に処理および記録する台帳技術の一種です。
データを通信する際に取引データを英数字の羅列に暗号化する技術「ハッシュ」と、本人確認をシステム上で行える仕組みである「電子署名」(デジタル署名)を用いることで、データの改ざんを容易に検出できる仕組みを持っています。
ブロックチェーンでは、すべての参加者が取引履歴をコピーし続ける「自律分散システム」という特徴があります。自律分散システムがブロックチェーンの大きな特徴であり、管理者がいなくとも公正な取引の履歴を安定して記録し続けることが可能です。
|スマートコントラクト(管理者がいなくても取引を実行できる)
スマートコントラクトとは、一定のルールを満たす動作が発生した際に、ブロックチェーン上で実施されるプログラム、およびその仕組みを指します。
この仕組みは、自動販売機のように利用者が硬貨を投入し、飲み物のボタンを選択した瞬間に売買契約が成立するイメージに似ています。
ブロックチェーンは、基本的にオープンソースで構築されています。つまり、ルールがソースコードとして誰でも閲覧できる状態です。
このように、あらかじめ誰もが閲覧可能なルールを、自動で実施する仕組みがスマートコントラクトです。
DAOでは、ルール化された貢献に応じた所有権の分配や、取引の実施といった作業を、すべてスマートコントラクトとして記録や履歴を残しながら実施します。
管理者がいなくても、手数料を削減しながら信頼性の高い取引の実施が可能です。
|ガバナンストークン(管理者の代わりに組織の管理・運営を行える)
DAOの運営方針といった意思決定に関わるには、「ガバナンストークン」を保有する必要があります。
ガバナンストークンとは、DAOで使用される仮想通貨(暗号資産)です。
ガバナンストークンがあれば組織運営の提案や、意思決定の投票に参加できます。イメージとしては企業の株式に近いものです。
株式との大きな違いとしては、ガバナンストークンで決められる範囲があらかじめルールで指定されていることや、発行上限が設定されている点です。
ガバナンストークンを入手するには、他の仮想通貨と同様、仮想通貨取引所で購入するか、もしくは、DAOごとに定められたルールをもとに組織へ貢献を行う、という方法があります。
|DAOの特徴
DAOには、主に以下の3つの特徴が挙げられます。
|中央管理者不在の組織
DAOの特徴として最も代表的なのは、中央管理者が不在の組織であるという点です。
DAOの組織運営には特定のリーダーは存在せず、その運営方針はコミュニティメンバーの総意(投票活動)によって決定されます。
このような運営方式の具体例としては、ビットコインが挙げられます。
ビットコインは、特定のリーダーがいなくとも、世界中のマイナーたちによるマイニング活動によってブロックチェーンネットワークが維持・管理されています。
|誰でも参加できる
従来の企業などの組織に参加するためには、一般的に、適性や能力を問う試験や面接をクリアしなければなりません。また、組織に所属する際は、法に基づいて雇用契約を結ぶこととなります。
しかし、DAOの場合、年齢・国籍・性別・能力に関係なく、誰でも参加することができます。
プロジェクトを進めるためのプログラミング技術などを持たない、プロジェクトを応援したいファンのような人も参加でき、ガバナンストークンを持っていればプロジェクトの運営に関わることも可能です。
ちなみに多くのDAOは、チャットサービスの「Discord」をコミュニケーションツールとしており、DAOに参加することは、DAOが持っているDiscordサーバーに参加することとほぼ同義となっています。
|情報の透明性が高い
たとえば、株式会社の場合、出資している株主であっても、四半期など一定の期間ごとにしか財務状況を把握することができません。
それに対してDAOは、運営に関する情報がパブリック型のブロックチェーンに保存されているため、透明性のある状態で、常に最新の財務状況などを閲覧できるようになっています。
また、組織運営に関する意思決定は、ガバナンストークン保有者の投票によって行われますが、その投票のプロセスや結果もブロックチェーンに記録され、常にオープンな状態です。
どのような仕組みで組織が動いているのか外部からでも把握できるため、組織の透明性が担保されているのです。
|DAOが注目されている理由
そもそも、なぜDAOは注目されているのでしょうか?それには、下記の4つの理由が関係しています。
― Web3.0という概念の浸透
― DeFiの発展
― NFTやメタバースとの関連が深い
― 誰でも作って運営できる
|Web3.0という概念の浸透
DAOが注目を浴びた背景として、Web3.0という概念が有名になったことが挙げられます。
Web3.0とは、「非中央集権的」や「分散型インターネット」などをキーワードとする、新しいインターネットの概念です。
Web3.0とDAOには、「分散型」「ブロックチェーン活用」などの共通点があります。
Web3.0は、インターネットにおける「情報の一極集中状態」「プライバシー保護問題」を解決する概念も含まれています。
それを実際に組織運営の形で落とし込んだのが、DAOと考えると分かりやすいのではないでしょうか。
今後ますますの発展が期待されているWeb3.0とともに、DAOは、インターネットにおける重要な要素として考えられています。
Web3.0については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてチェックしてみてください。
▶︎ 関連記事:【Web3.0とは】注目されている理由や特徴をわかりやすく解説!
|DeFiの発展
DeFiとは「分散型金融」を意味しており、DAOと同じく、ブロックチェーン上で構成された金融システムです。
DAOがなぜ関連して注目されているのかというと、それは「DeFi市場で活用されている組織形態がDAO」であるためです。
つまり、DeFi市場が拡大していけばその分、今後もDAOの数が増えたり、認知度が高まったりすることが考えられます。
|NFTやメタバースとの関連が深い
DAOの考え方は、参加するすべてのメンバーで価値を共有および所有するというものです。
これはデジタルコンテンツの所有権が、唯一無二であることを証明する技術「NFT」から生まれました。DAOとNFTは、どちらもブロックチェーン技術で実現されているため、よく関連付けられます。
今後、DAOやNFTが主流になってくると、ユーザーがアバターを使って社会生活を送る「メタバース」にDAOの仕組みをもった組織も生まれるでしょう。そうなると、メタバースで人々が働き、暮らすといった可能性が出てきます。
このようにNFTやメタバースといったワードとの関連性から、DAOは注目を集めています。
さらに、インターネットに接続できる環境さえあれば、DAOの構築や参加が可能といった参入障壁の低さも、注目を集める理由の1つといえるでしょう。
|誰でも作って運営できる
DAOは、インターネットへ接続できる環境があれば、誰でも作って運用できます。
参入障壁が低いため、今後認知度が高まるにつれ、さまざまなDAOが登場していくと予想されています。
従来の株式会社であれば数多くの手順を踏んで準備する必要があった環境も、DAOなら比較的簡単に用意できるでしょう。
|DAOを活用するメリット
DAOを活用することによって、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
|高い透明性をもつプロセス
DAOはブロックチェーン上に構築されており、取引履歴はすべて記録され、誰でも参照可能です。
既存の組織では、不透明な取引記録が存在する可能性もありますが、DAOではそのようなことはありません。
取引のルールは誰もが参照可能な箇所に事前に定義されているため、ルールを理解していなかったとクレームをつける人がいないのは大きなメリットです。
|誰でも参加できる
DAOには、そのDAO関連の仮想通貨を保有していれば参加可能です。
そして組織の方向性はガバナンストークンの保有数にのみ応じて決まります。そのため国籍や年齢、人種、性別関係なく、すべての人が組織運営に参加できる可能性をもちます。
メンバーは、魅力のあるルールをもつDAOに貢献が可能であるため、労働意欲も上がるでしょう。
|管理コストを削減できる
一般的な組織に存在する、特定の所有者や管理者が存在しないため、管理コストが削減可能です。
組織運営は、そのDAOに魅力を感じるユーザーが実施します。組織構造は既存組織のようなものではなく、フラットな簡略化されたものです。
上司に相談するといったアクションもなくなるため、低コストかつスピード感がある組織体制となるでしょう。
|DAOの問題点
さまざまなメリットをもつDAOですが、重要な問題点もいくつかあります。どのようなものか確認していきましょう。
|法整備が整っていない
DAOは、株式会社をはじめとした伝統的な組織体系とは異なり、民主的かつシステミックな運営プロセスを前提として統治されています。
そのため、このようなブロックチェーンを基盤としたシステムは、既存の法律の管轄外で運営されており、多くの国家や地域においてDAOに関する法整備が追いついていません。
日本の仮想通貨取引所の場合、金融庁の認可を受けて営業しています。そのため、ハッキングといった被害が発生した場合、被害に対する措置を受けられる可能性があります。
しかしDAOの場合、ハッキング被害の措置義務はありません。
DAOに関する法整備が進んでいないことは、DAOを軸としてプロジェクトを立ち上げる際の障壁になり得るでしょう。
ただし、このトピックについては特定の地域で解決が進んでいます。
2021年4月、アメリカのワイオミング州において、DAOを有限責任会社として正式な法人格を認める法案が承認されています。
加えて、ミクロネシアのマーシャル諸島では2022年2月に、DAOを法人として承認する法改正が可決されています。こちらもワイオミング州と同様に有限責任会社と同等の権利を認めるもので、マーシャル諸島は国家としてDAOを承認した世界初の事例となりました。
|意思決定や施策の実行に時間がかかる
DAOの特徴として、中央集権者がおらず民主的に運営される点を挙げました。
この特徴は裏を返すと、組織としての意思決定が遅くなってしまうという懸念に繋がります。
DAOが運営方針を決定するためには、ガバナンストークンによる投票が必要なため、方向性の決定までに時間がかかってしまいます。
そのため、DAOが運営および管理しているサービスがハッキングされた時、スマートコントラクト上の欠陥が発見された時、などといった致命的なインシデントが発生した際には、意思決定が遅れてしまう可能性が考えられます。
このような状況下においても、組織の意思決定に際して原則的にガバナンストークンによる投票が必要になります。
もし投票活動によるコミュニティの意思を無視するようなことがあった場合、その組織はDAOとしては機能していないことになってしまうためです。
上記のような不測の事態に対して、トップダウンで素早く事態の収拾を図るような動きが取れないことは、DAO運営上のデメリットと言えるでしょう。
|世界的なDAOの事例
DAOを活用したコミュニティ事例はどのようなものがあるか、知名度の高い4つの事例をご紹介します。
|投資ファンド:The DAO
The DAO は、2016年にStock.it社が立ち上げた分散型の投資ファンドで、イーサリアム上につくられた最初の大きなDAOでもあります。
投資先をガバナンストークンのThe DAOトークンによる投票で決めるという、これまでの投資ファンドにはなかった仕組みが注目を集めて、2016年当時の時価で150億円ほどのイーサリアムの調達に成功しました。
しかし、The DAOのシステムには脆弱な部分があり、それをハッカーに攻撃されたことで、集めた資金の1/3程度を流出することになったのです。
その結果、The DAOトークンは上場廃止となり、The DAOも消滅することとなりました。
今ではさまざまなDAOが活発に稼働していいますが、黎明期にはThe DAOのように、歴史に残るような大きな失敗もあったことを知っておきましょう。
|ステーブルコイン:Maker DAO
Maker DAOは、デンマークの起業家であるルーン・クリステンセン氏が立ち上げたコミュニティで、ステーブルコインであるDAIの発行・管理や、レンディングプラットフォームの運営を手がけています。
DAIは、企業ではなくコミュニティが管理する世界初のステーブルコインでもある。
2014年にスタートしたプロジェクトは当初から分散型のガバナンスを模索していましたが、2018年からはMaker財団を立ち上げて、中央集権的な構造を採用しました。
しかし、Maker DAOが成熟してきて、参加者がプロジェクトを自ら運営できる状態となったために、2021年7月にはMaker財団が解散することが発表されました。
このようにDAOでは、初期段階では舵取りをする中央集権的な組織やリーダーがいても、時を経ると完全な分散型のコミュニティに移行していくパターンが多く見られます。
|ゲーム:Illuvium DAO
Illuvium(イルビウム)は、オープンワールドを舞台にしたブロックチェーンゲームです。
従来のゲームでは、あらゆる仕様を製作者である企業や個人が決定しており、プレイヤー側にはそれに関与する余地がありませんでした。
しかし、IlluviumではDAOのガバナンスを通して、ゲームの運営の一部にユーザーが関わることができます。
ただし、ガバナンストークンを多く保有するほど投票での権力が大きくなる仕組みだと、お金を持っているユーザーが自分にとって有利になる形でゲームの仕様を捻じ曲げてしまう恐れがあります。
そこで、Illuvium DAOはCouncil(評議会)の形を取り、ガバナンストークンの保有者による選挙によって、Councilでの意思決定をおこなう代表者を選出する仕組みを採用しました。
|日本初のコミュニティ:Ninja DAO
Ninja DAOは、仮想通貨関連のインフルエンサーであるイケダハヤト氏が立ち上げた日本発のコミュニティです。
CryptoNinjaというコレクタブルNFTの公式コミュニティで、イラストレーターや漫画家、アニメーターなどのクリエイターが参加しており、NFTの作成だけでなくゲームや動画の作成、メタバースに関連した活動など、幅広い分野のプロジェクトに取り組んでいます。
多くのDAOは海外で作られており、英語での会話が基本ですが、NinjaDAOなら日本語で他の参加者とのコミュニケーションを楽しむことができます。
また、Discordには初心者向けの教育コンテンツも多数用意されているので、NFTやDAOに初めて触れる方は、NinjaDAOへの参加から始めてみるのもいいでしょう。
|DAOの将来性
DAOは透明性が高い仕組みであるため、非営利活動と相性が良く、今後もさまざまな業種でのDAO利用が進んでいくと考えられます。
存在するDAOの数はまだわずかですが、今後さまざまなDAOプロジェクトの活動が人々の注目を集めていくでしょう。
日本においても2022年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)が閣議決定されました。
この中で、インターネット上の信頼の仕組みである「トラステッド・ウェブ」(Trusted Web)実現に向けた取り組みや、ブロックチェーン技術を基盤とする、NFTやDAOの利用などのWeb3.0(Web3)に向けた環境整備を進めるとしています。
|まとめ
ブロックチェーン技術はDeFiやNFTを実現し、DAOという概念によって、人が働くためのさまざまなコミュニティを生み出しました。
DAOは、世界各国で法整備が追いついていないといった重要な問題もありますが、透明性が高く、公平な仕組みであることから今後とも注目を集めていくでしょう。
日本でもブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAO利用環境が整備されるに従い、メタバースで人々が働き、暮らしていく未来も考えられます。
DAOやNFT、ブロックチェーンといった技術を理解した上で、Web3.0の動向をしっかりと見定め、組織の方向性をいつでも軌道修正できるよう準備をしていきましょう。